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ヤクザと家族 The Familyのmのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
昔も今も、賢治は家族を守りたいだけなんだ。
自分の家族を傷つけた人間を許さない、と。

もともと、亡くなった実の父親にシャブを売った人間を見つけたら殴りかかるような少年だから、義理と人情を掲げる組には向いていた男だったんだろう。

刑務所を出た賢治を待っていた、暴力団を取り締まる厳しい法制度は、その組織を弱らせることで、この先、普通の生活を送る若者たちが簡単に裏世界に巻き込まれることのないよう防ぐけれど、その一方で、すでに浸かってしまった人間のことは容赦なく切り捨てるものでもある。

賢治は「なんでヤクザやってんの」と聞かれ、「家族だからだ。なんでとかない」と答えている。
まだ19歳で頼れる大人もおらず、ひとりぼっちだった彼にとって、柴咲組は生きる居場所を与えてくれた存在だった。賢治を見捨てないでいてくれた人たちだった。
ぼろぼろに殴られても弱さを見せようとせず、相手を睨み続けていた賢治が柴咲の前で泣いた時、安心したんだなあと、幼い子どもを見るような気持ちになった。迎えに来てくれる人がいるということが、どれだけ心を支えることか。

誰かを脅し、傷つけ、恐怖を植え付けるヤクザを肯定することなど、私には到底できない。
だけど、孤独な若者が家族を求めて生きた結果、その先の人生をすべて諦めるしかなくなり、更生の機会も与えられないことは本当に正義なのだろうか。

賢治は結局、お金も束の間の幸せな家庭の時間も失ったけれど、賢治が自分の家族を守ろうと必死に生きた証としてこの世界に唯一残されたものが翼だったように思う。

映画の鑑賞後、主題歌「FAMILIA」のMVを見て、映画では我慢していた涙が堪えきれなくなった。
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