このレビューはネタバレを含みます
居た堪れない。
半ばからケン坊社会と交わっていく中で、その生きにくさが描かれ始める。女性と出会い、世の中を知り、それでも気質（かたぎ）を貫いて捕まった。
そして、生きにくさが本格化するのが刑務所を出たあと。
結局彼は過去が足枷となって、一変した世の中の流れについて行けなかった。
最後に訪れるさまざまな「終わり」。組長の死、ケン坊の襲撃、由香と娘の転居…
それは、物語の終わりだけでなく、ヤクザが生きた時代の終わりでもあった。
翼が加藤に放った「お前らの時代じゃねえってことだよ、おっさん。」がとても象徴的。
ヤクザ側の世知辛さが存分に描かれていたが、自分たち一般市民のことを考えると、どうしようもないとしか言いようがない。
自分が感じる社会の行きにくさとは次元の違う話だ。
胸の痛い話だった。
