シネマスナイパーF

ヤクザと家族 The FamilyのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
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考えに考えさせられましたが、結局出る結論は、辛い世の中になったな、というシンプルな感想


数こそ少ないですが、僕の知る藤井道人監督作品に感じること
自分の持つ大義や意志が、より広い社会では通用しないもどかしさ
デイアンドナイトが一番近い
一見そういったテーマからは遠く見える、世界でいちばんあかるい屋根も、星ばあという異端児とつるむつばめが周りとなんとかやっていくまでの話だった
大好きな作品である悪魔は完全に閉じた世界の話だったけど
今作もそういった話と言える

そして繰り返し登場するモチーフ
デイアンドナイトでは風車、屋根ではそのものズバリ街、悪魔はエビ
そして今作では工場の煙突が繰り返し登場する
明らかな意味を持たせて毎回くどいほどに用いていますね


ヤクザ映画感は薄め
やはり、受け入れてくれない大きな社会へのもどかしさ
本人達にやり直す気があり、本人達が許す気でいても、社会は受け入れないし、許さない
本当はまた仲良くしたいし一緒にいたいのに、世の中がそれを阻むんですね
それも仕方のないことではありますが、いきすぎた自己防衛、相手よりマシだからと自分が潔白だと信じ込む傲慢な普通の人々の恐ろしさを感じるにあたり、綾野剛というスターがセンターを張らせ、舘ひろしを組長に置いたことで、より強くメッセージが伝わる

新世代の怖さを強く感じさせるのも社会派としてグッド
SNS、動画撮影と、暴力以上の身の危険をヤクザの映画で感じさせてきたのはフレッシュ


家族という多くの人が共感できるはずの温もりを否定していくのもまたマジョリティーという残酷さ
普通の人々は本当に冷たすぎると
最後、切なすぎる
そして、綾野剛と常田大希が友達で本当によかった