シネマスナイパーF

哀愁しんでれらのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
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親と同じ轍を踏みたくないと
自分で自分を呪い続けた哀しきふたりでした

決定的に大事な場面は、突き放した引きで長めの固定ワンカット
これが結構クセになる
クライマックスの石には初見時マジでびっくりした
忘れられないピリついた時間が多々ある時点でこの映画の虜


二回観ると、改めてインスリンや耳鳴りは置き方がちょっと下手だなと思ってしまう
例えば耳鳴りは、助けた直後あたりで大ちゃんが小春の言うことを聞き取れなくてもう一度言ってもらうけどそこは酔ってるで誤魔化す、とか他のやり方あるでしょ
大事な設定ではあるんだけど、置きにいきすぎ
クリーニングのタグの伏線は上手かったけどそこまで重要ではないという
前半が微妙ってのが本当にもったいないな〜
登場人物も置いてる感強い
人生を楽にする方法を教えてくる友達、テーマに関わることを喋るわりに後半登場しない
一番勘弁してほしいやつ
大ちゃんの恩師的な人のように、一瞬だけ出てきて説明だけしてくれる人はまだいい
もっともらしいこと喋ってはいるけどもあの人の話す内容は正直作品に必要とは思えないから削れ

ただ、前半超置きにいった分、後半の不穏さが強烈
喋らずに緊張感を押し付けてくる感じ、たまらん!!
我々が言葉を失うような事実を突きつけられたときは、登場人物も同様に黙る
後半の演出力は好き
みんなして不穏なとき耳触りだすのには笑うけど
オープニングも、上下反転で始まり、タイトル出るとこは時計が12時だったりとこだわりを感じさせる
色使いに対するこだわりは全編通して強く感じる
幸せ絶頂時の、それぞれ赤青黄の服装が好き
大ちゃん宅の内装等、美術は本当に綺麗

土屋太鳳、ある出来事を境に目が死ぬのが最高だね
一度ヒカリから離れざるを得なくなる時、激しく声出してる割に涙出てねえじゃねえかと思いましたが、その後の場面で静かに涙が頬をなぞる
要所要所だけでなく、映画全体としても、溜めて爆発という流れを大切にしていると思う
かつて抱いていた理想の幸せを自らの手で捨ててしまう小春と一線を超えてしまうヒカリをカットバックで見せてくとこは、スローで溜める溜める
田中圭もキレ演技が最高
石橋凌さん、銀粉蝶さんの親演技も良く、特に銀粉蝶さんは少ない出番ながら完璧でした


理想を固めすぎると、子供の天の邪鬼さには対応できませんね
そして良くも悪くも子供は残酷だった
内緒と約束したことを話してしまうくせに、抱えておくとまずい秘密は話さない小春のスタンスは如何なものだったのか
目の前の幸せな状況を壊さない最善の方針だと判断したのかもしれませんが、果たしてそれが将来の幸せに繋がるのか
なんとか保っていた線がズレる時、哀しいのに映画としてはこれ以上ないぐらい面白くなってしまうのよ
出来の善し悪しを超えて、面白かった
同じ轍を踏むってこんなにもスリリング