ちよ

Journey Into the Night(英題)のちよのレビュー・感想・評価

Journey Into the Night(英題)(1921年製作の映画)
3.7
FWムルナウの残っている最古の映画らしいですが、この監督の作品は初めて見ました。

恋愛してる描写が長ったらしいなー!と思ったのと、どうしても脚本的に最初に不倫した主人公に感情移入ができなかったので自業自得では?と何も感じませんでしたが、客観的に見るとかなりいい映画なのではないかなと思いました。

セリフも少なく起きることも少ない映画ながら登場人物の複雑な心情描写をかなり緻密に描いていると思います。主人公の持つ愛と誠実さというものが少しづつ確実に崩れていく映画ですが、演技でよく分かりますし、同じ出来事:手へのキスやあなたは聖人のようだというセリフ の比較でしっかり主人公の変化を描いていました。
また、意図的に使った自然が効果的に使われているなと思いました。まず盲目というモチーフと共に光と闇が比喩として使われており、シーンによって光と闇でナラティブを作っているのが明確です。次に登場人物の背景に強い風、動く波、雷を映して心情描写を助けている手法は、黒澤映画を思い出しました。こっちが先ですが。

上記2つの点が、さすがラムナウなのかな?と思わせるものでした。その年代にしてはかなり先進的な映画だと思います。ラムナウはまたNosferatuなど見ていきたいと思います。

最後になんでみんな死んだの?死ななくていいでしょ?と思ったのですが、私がYouTubeで見た字幕が良くなかったみたいで、エイギルがリリィに「お前を殺す!」と字幕で言っていましたが、「お前が死んだら治してやる!」だったんですね。やっと腑に落ちました。ドイツ語をみたら主語がなく命令形なので間違った訳だと分かりました。意味不明だったわけです。

目当てだったコンラート・ファイトがやっと出てきましたが、セリフがほとんど無いながら心情がハッキリ分かる素晴らしい演技で好きが更に深まりました。エイギルの妻をひと目見た時の演技で恋に落ちたことが分かりました。この映画、やたらファイト様だけエクストリームクロースアップが多くないですか?笑 ムルナウ、君もファイト大好きじゃんと。笑 目などの表情だけで十分気持ちを伝えられるいい役者だと思います。
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