ドント

ジョン・ウィック:コンセクエンスのドントのレビュー・感想・評価

4.0
 2023年。アリガトオオォォォッッッ。世界を牛耳る闇組織の偉いさんに目をつけられ逃げ続けるジョン・ウィック、NYから大阪、パリへと移動して真田広之やらドニー・イェンと邂逅しつつ、調子こいて組織の上を狙うアホを踏み台に一世一代、自由を勝ち取るための勝負に出る第4章。
 169分というアクション映画にあるまじき長さで描かれるのは、まず闇社会の乾いた世界観とウェットな繋がりのドラマである。組織というものの「圧」が個人の情を無にしたり消し飛ばしたりし、そんな中でも友情は静かに奏でられる。本質的にはこのシリーズはハードボイルドなのだということを物語る。
 と同時に本作は1から続いてきたアクションのインフレ化が極みに達しており全くもってどうかしている。本当にどうかしている。3から引き続いて「クッソ硬いアーマー」と、あと「めっちゃ硬いスーツ」をキャラの半数くらいが着ているので一発必殺など皆無に等しい。ボンボコ撃ち合ってヌンチャクとかも出る。アクションゲームだってもうちょっと敵弱いよ? あとヌンチャクってなに?
 大阪電撃おもてなし作戦でご機嫌をうかがってから、スコット・アドキンスならぬ太っちょ・アドキンスの怪演と回し蹴り(いつもイイ人感が漂うスコアドをこういう怪人役で起用したのは見事という他ない)を挟みつつ、そしてパリ。凱旋門、空き家、階段の三重おせちでハチャメチャは頂点に達する。実を言うと最近心が死んでいたのだけれど、凱旋門人身事故祭りと空き家俯瞰殺戮フェスを観ている時間は心に血がどくどくと流れるのを感じた。バカじゃねぇの!? と叫びながら涙が出そうになった。
 そうして最後は何故か西部劇……ガンマンの決闘へと至る。いや音楽はモリコーネっぽかったし血とか出るのでマカロニ・ウエスタンか。パリの朝焼けの中で物語は静かに、ひそやかに終わる。世界に、巨大な権力に一撃かましたひとりの男の物語は終わる。友情と愛と犬と共に……。
 結局のところジョンは、もがき苦しみながら穏やかさを夢見て生きていたということが示されて幕は下りる。人こそ殺さないが、私たちもそれは同じだ。だからこそ、どんな無茶をやろうとも、ジョンに感情が揺さぶられる。
 低予算の肉弾戦ガンファイトアクションから世界観と予算がどんどん拡充していって、ついにはここまで来てしまった。ともあれジョンの旅路は(たぶん)終着駅へとたどり着いた。業と苦悶と友情と暴力の旅路をありがとう、ジョン・ウィック。旅路の途中で人が4桁近く死んだ気もするが、ありがとう。
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