しの

トランスフォーマー/ビースト覚醒のしののレビュー・感想・評価

3.1
優等生的とはいえ流石にドラマがチープなのと、あとやはり同じニコイチの鍵を奪い合う話なら『デッドレコニング』の狂気の方が全然印象に残ってしまっているので、逆説的にやっぱりトム・クルーズって映画のこと分かってるんだなと思ってしまった。とにかく人間が不要すぎる。

序盤20分くらいの、登場人物が事件に巻き込まれていく過程をカットバックで見せていく語り効率の良さは流石ハリウッドだと思ったし、アクションもサスペンス的にしたり同時多発的に戦っている空間をうまく見せたりと見応えがあった。最後は画がまんまエンドゲームだし。

ただ、申し訳ないのだがそれ以降どんどん人間はこの話に不要なのではと思えてきてしまう。主人公の弟が「僕も行く」とか言い出すくだりの絶望的なつまらなさ、クライマックスで彼が兄貴に檄を飛ばすくだりの強烈な陳腐さ、そして何もかも丸くおさまる結末の呆れるチープさ。途端にスケールが小さく見える。

そもそも、人間をロボットたちの壮大なアクションに何とか絡ませようと苦心している感が全編に滲み出てしまっている。人間ならアレができる、都合がいい、みたいなくだりが何度かあるのだが、実際アクションシーンになると人間サイドのもたつき加減が割とストレスだ。たとえばクライマックスなんかも、パネルにたどり着くまでにイチイチ立ち止まってんじゃないよ、とか思ってしまった。大事な戦いに人間なんかを連れて行っていただいてすみません……という気持ちになってくる。鍵のパーツ半分ずつで流れとしては同じことを2回やっているのも若干かったるい。

だから折角アガるクライマックスも、美味しいところを人間が持っていこうとするので急激に萎えてしまった。こんなことをするくらいならビーストたちの出番をもっと増やしてほしい。一言も喋ってないメンバーがいるのは流石に何? と思う。宇宙をひとつにとか言われても……。

なので結局、序盤20分と所々のアクション以外はほぼ印象に残らなかった。あのヒロインなんてほぼ“無“だし。過去作よりは人間ドラマの比重が減ったかもしれないが、それはそれで余計に人間の邪魔さが際立つ。夏休み映画としては優等生的でいいんじゃないかと思う。
しの

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