ゑぎ

十三人のゑぎのレビュー・感想・評価

十三人(1937年製作の映画)
4.0
 当時のソ連最高指導者スターリンが、フォードの『肉弾鬼中隊』(1934年)を見て感激し、ロンムにリメイクを命じて出来た映画という逸話が伝わる作品だ。確かに砂漠を舞台にして、見えざる敵との戦いを描いているという点で、設定は借りているけれど、本作オリジナルの井戸水を巡る交渉場面が抜群に面白く、全く別の映画に思える。後の本作のリメイク、ゾルタン・コルダ監督作『サハラ戦車隊』(1943)やアンドレ・ド・トスの『廃墟の守備隊』(1953)も、当然ながら、井戸水の交渉を一番の見せ場として描いている。

 さて、前半の砂漠を彷徨するシーンでは、画面下部9割以上に砂漠を映し、上部のすき間に兵士たちを映し込んだ画面が頻繁に現れるのだが、ま、これは極端な構図ではあるが、その他の砂漠のカット含めて、筆舌に尽くし難い美しさだ。本作でも、ロンムの構図に対する美意識とその徹底性にまず、圧倒されてしまう。

 また、主人公側は(一応、指揮官を主人公とすると)赤軍兵士だが、こゝに、指揮官の妻と科学者という二人の民間人(軍属というべきか)が加わっているという設定アイデアも、プロットを複雑なものにしている。指揮官とその妻が、一緒になって、手榴弾で敵と戦う演出も見どころだ。リメイク作含めた3作の内、生き残った者が一番少ないのが本作、というこの厳しさもいい。
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