ゑぎ

トルブナヤの家のゑぎのレビュー・感想・評価

トルブナヤの家(1928年製作の映画)
3.5
 建物と沢山の窓。窓の明かりが消えていく。沈む太陽。モスクワの街。続いて、朝の光。広い通りのロングショット。人物を画面奥(上)に置き、手前(下側)に、広く路面を映す。あるいは、線路に光が反映している。とてもフォトジェニックなカットが連続するオープニングだ。
 次に、アパートの階段。猫。建物の断面を装置としてこしらえている。階段で掃除をしたり、カーテン?を叩く人、踊り場でまき割りをする人が現れる。踊り場の床が崩れかける。だんだんと大騒動になる、この意味不明さも面白い。

 カメラがアパートから街へ出ると、アヒルとアヒルを追いかけるヒロインが登場するのだが、彼女が路面電車に轢かれかけると、電車から車掌が飛び降りる。その途中で唐突にストップモーションし、前日に遡る、というこの繋ぎもふざけている。こんなふざけた映画だとは思っていなかったものだから、吃驚してしまった。

 このヒロイン、どのシーンも最初は、ぼーっとしているか、不安な表情か、なのだが、シーンの終わりごろには徐々に笑顔になり、破顔するのがいい。彼女が劇場に紛れ込み、舞台を見ながら、演劇と現実の区別がつかなくなり、舞台に上がって、劇を滅茶苦茶にしてしまう場面が本作の最も良いシーンだ。
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