こなつ

私のプリンス・エドワードのこなつのレビュー・感想・評価

私のプリンス・エドワード(2019年製作の映画)
4.0
新世紀香港映画特集2023ということで、上映しているのも東京は「新宿武蔵野館」だけ。6月1日までの短期上映かと思っていたので慌てて観に行ったのですが、もう少し上映される様子。

ポスターが素敵でそれだけで心惹かれるものがあった。ノリス・ウォンという1987年生まれの新鋭監督の長編デビュー作。脚本もノリス・ウォンが担当している。女性目線で男女の結婚に対する意識の相違をリアルに描いていてなかなか見応えのある作品だった。

「誰がための日々」「淪落の人」を輩出してきた「オリジナル処女作支援プログラム」の入選作品であり、香港電影評論学会大奬で最優秀脚本賞を受賞。

プリンス・エドワード地区の「金都商場」にあるウェディングショップで働くフォン(ステフィー・タン)は、同じビルでウェディングビデオのカメラマンとして働くエドワード(チュー・パック・ホング)と同棲している。ある日エドワードからプロポーズされたフォンだったが、彼女は10年前中国大陸の男性と偽装結婚していてまだ婚姻が継続中という事実がわかる。離婚への手続きと結婚への準備を同時に進めていく中で、彼女が今まで当たり前に受け入れていた事柄に疑問を持ち始め、結婚とは、幸せとは一体何かと改めて考えるようになる。

男女の結婚に対する意識の相違というのは、どこの国でも同じなのかもしれない。派手なプロポーズも豪華な披露宴も望まないフォンに対して、母親の言いなりに何でも進めていこうとするエドワード。フォンの主張はいつの間にか立ち消え、彼自身や彼の母親の言い分が優先される。

お金欲しさにいとも簡単に偽装結婚をしてしまう若気の至り、そして香港のIDを手に入れることで自由を掴もうとする若い中国大陸の男の必死さ。返還後も深く蔓延る香港と中国大陸で生きる若者の姿を等身大の視線で垣間見ることが出来た。

エドワードは独占欲が強く嫉妬深い上に大騒ぎする。フォンを愛している気持ちは伝わるが、何かピントがズレている。フォンが終始静かなトーンを保っているのがとても印象的。登場人物の心の機微を絶妙なバランスで描写させている手腕が光っていた。

香港で歌手としても活躍している主役のステフィー・タンが主題歌を歌っている。
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