ごんす

君は永遠にそいつらより若いのごんすのレビュー・感想・評価

4.3
粗削りな所もあり少し不格好な映画だとは思うけど大好きで原作も読んでみたり何度か観直してしまったりする映画。(お前主演二人好きなだけだろとも思う)

前半は緩い大学生のモラトリアム期を見せられるよくある話かと思いきや主人公の堀貝が柰緒演じる猪乃木さんと知り合ってからはこの映画独自の色が出てくる。

それにしても冒頭で堀貝の設定を説明する為だけにあそこまで不快なレベルの飲み会見せるのは驚いた。
大学の飲み会でまわりのセクハラだけでも最悪なのにかなりの人格攻撃しながら枝豆投げてくる奴が現れる。
もう殺し屋映画ならビール瓶で頭割られて口に破片いっぱい詰められて何度もテーブルに顔面押し付けられそうな敵キャラ。
あいつ登場冒頭だけで物語に一切絡んでこないのに出す必要あったのか。


この映画では人間が抱える悩み、他者が抱える悩みや痛みについて強く問われる。
日常に潜んでいる暴力的なものから弱者が理不尽に受ける一方的な暴力まで射程が広い。

自分が欠陥品だから誰も触れようとしないと思ってしまう堀貝の痛みや猪乃木さんが隠すようにしてきた傷。
堀貝のバイトの後輩安田が抱える悩みなどどれも切実なものだったが彼らは普段は全然大丈夫な人に見える。
そもそも悩みや心の傷を見えないように隠している人のことを気付くのはとても難しい。

「気付くわけないよ、気付かれないように頑張ってるんだから」と言う猪乃木さんに「それでも気付けなきゃいけないと思う」と力強く堀貝が言う。
堀貝の人となりが凝縮されていて二人が特別な存在として互いを認め合う素晴らしいシーンだった。

友達の良くない兆候に気付けなかったことで自責の念に苦しむ吉崎の姿にも心を打たれる。
しかし演技力の問題なのか脚本、演出のせいなのか少し長い台詞の時に違和感があった。
重要な役だと思うので少し浮いて見えるのは悪くないのかもしれないけどトーンが合ってない気がした。
細かいことだけど終盤の「不法侵入で捕まるぞ!」とか言うかな?
捕まるぞ!とか通報されるぞ!で良くない?
一度引っ掛かると彼が喋る度に少しノイズに感じてしまった。

優しく力強い劇伴がとても良い。
何度も会いたくなる登場人物達やタイトル回収時の驚きなど観れば観るほど好きになって文句も言いたくなる映画。
ごんす

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