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エルのTSのレビュー・感想・評価

エル(1952年製作の映画)
3.7
【異常なまでの嫉妬心】79点
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監督:ルイス・ブニュエル
製作国:メキシコ
ジャンル:ドラマ
収録時間:92分
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ルイス・ブニュエルの作品の中でも傑作と謳われる今作。敬虔なカトリック教徒である男が一人の女を束縛していくという話。この男の嫉妬心が異常であり、気狂いみたいになっていく描写がたまらない。実際、これくらいの束縛男が世の中にどれ程いるのでしょうか。

中年のフランシスコは、教会で出会ったグロリアという女性に恋をする。彼は彼女の婚約を破棄させ、自分の妻にするのだが。。

敬虔なカトリック教徒ということもあるので、女性の対応に慣れていないのか、ありえない言動ばかり連発するフランシスコ。どうやら自分を世界で一番不幸な男と思っているらしく、彼女の自分への愛を確認するため、常識的には聞かないであろう質問をグロリアにしまくります。で、少しでも男と話していたら難癖をつけますし、被害妄想も激しい。ホテルで殴られたグロリアの友人なんて不憫で仕方ない。何なのだこの男は。

要求を聞く割には最終的に自分の意見を押し通す自己中心具合にもグロリアは頭を悩まされます。承認欲求を超えた、ある意味病的なほどに自分を愛して欲しいという気持ち。グロリアもグロリアで、よくこんな人に耐えてるなと思わされてしまう。タイプライターのシーンなんて、もうほっといて出ていけば良いものの、そこはグロリアの優しさなのか、妙に調和するところもありある意味恐ろしいです。

終盤の教会のシーンはかなり印象的でして、わざとブツ切りのカットをしているのがまた良い。敢えて撮影方法を初心者っぽくすることにより、より不気味さが出ています。誰一人信用できなくなったフランシスコの心理的状況をよく示してる撮り方だと思います。ツッコミ所満載ですが、とにかく憎たらしいがこの男がグロリアに何をしでかすのか、食い気味に見てしまう作品であります。
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