Kientopp552

Ares(英題)のKientopp552のレビュー・感想・評価

Ares(英題)(2016年製作の映画)
3.0
 本作のストーリーは、近未来・ディストピーSFで、時代設定は、2035年である。本作の制作が2016年であるので、これは、約20年後の、将に来るべき「将来」である。場所は、おフランス製SFであるので、当然、フランスである。しかし、ヨーロッパ共同体が、もはや存在しなくなっているのであろうか、フランス国家自体が統治能力を失っていた。それは、赤字国債の発行のし過ぎで、フランスは巨額の負債を抱える赤字財政国家となり、その赤字を埋めるために、政府は、製薬関係の多国籍企業に借金をせざるを得なくなったことによる。こうして、政府は、債権者である製薬会社の都合のよいように、人体実験と、精神刺激剤投与、つまり「ドーピング」を「自由化」する。

 一方、一般大衆は、1500万人に及ぶ失業者数と、高いホームレス化に苦しんでいた。それ故に、「体制側」は、暴動を恐れて、銃器の所持を禁止しており、武器携行が見つかれば、厳しい処罰を受けるものとしていたのである。

 こうした苦しい現実から大衆が逃避するためには、「娯楽」しかなく、それは、テレビで放映される、混合フリースタイル格闘技に金を賭けて一攫千金を夢見ることである。しかも、登場する格闘技者の後ろ盾には、ドーピング剤を提供する巨大製薬会社が付いており、ドーピング剤の効能を巡って、各巨大製薬会社は、しのぎを削っていて、「スポンサー」として、自社がドーピング剤を投与した「選手」が勝つか負けるかは、同時に、その会社にとっての命運が掛かっていたのである。

 本名Redaレーダ、選手名Arèsアレースは、このような格闘技選手の一人である。かつては、一流選手の一人であった彼は、投与された薬剤の副作用で十年前に脳卒中を起こし、それ故、頭の左側にその時の手術の傷跡が痛々しい程はっきり付いている人間である。こうして、今は、しがない三流格闘技家となっており、貧相な高層アパートにある一室に住む住人である。彼は、まもなく格闘技界から引退することを考えており、今までに貯め込んだ金で、キオスクをやりながら、余生を過ごそうと思っていたところであったが、ある製薬会社が、精神刺激・体力増強作用において、画期的効力が期待される新製品を売り出そうとしており、そのために、ランキング下位のアレースがランキング上位者を倒すことで十分な宣伝効果が上がるという目論見で、彼に目を付けたのである。こうして、アレースことレーダの運命は大きく狂うことになり、本作のストーリーは、結末に向けて、更に展開する。
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