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レリック ー遺物ーの櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

レリック ー遺物ー(2020年製作の映画)
4.3
なんとなく『ヘレディタリー/継承』に雰囲気が似ている本作は、前半はゆっくりと進行していくが、後半はオカルト的になり緊張感が増していく。

本作は、愛すべき祖母が見知らぬような人に変化していく過程を、目の前で感じる娘と孫娘に焦点を置いている。

鑑賞後、多くの人が「あれは一体どういうことだったの?」と疑問を感じたのではないだろうか。
実際に作中で明確になっていない謎も多く、視聴者の解釈に委ねられているのだと思う。

という訳で、ここからはあくまで私個人の見解で考察しているのであしからず。
興味のない人は☆まですっ飛ばしてね(笑)





果たして、エドナ(ロビン・ネヴィン)は本当に認知症だったのか。
行動を見ていると明らかな物忘れとも取れるが、気になったのは医師に質問されるシーン。
しっかりと答えており、隠すところは隠す。
毅然とした対応が意図的にも感じられる。
実は認知症ではなく、何ものか(曽祖父)の憑依だとしたら…。
エドナは辛うじて自己を保っているが、度々憑依されて不可思議な行動をするのではないか。
彼女が怯えていたのはもちろん“死”もあるだろうが、山小屋に閉じ込められて亡くなった曽祖父の怨念や呪いだったとも考えられる。
小屋の前を通る度に気持ち悪かったのは、孤独になり誰にも気づかれず腐ちていった彼の念があの場所に残留思念として残っているから。

エドナは恨みを持ったまま亡くなった曽祖父に憑依され、彼の怨念や呪いを感じ取っていたのではないだろうか。

山小屋に付いていたステンドグラスを、曽祖父が亡くなった後に自宅のドアにはめ込んでいるのだが、これは言わば曽祖父の『遺物』だ。
恨みが籠もった物を自宅の玄関に貼り付けていれば、彼の怨念が入り込んだとしてもおかしくはない。
あのステンドグラスがきっかけとなり、クローゼットの巨大空間が出来上がったとも考えられる。
呪いは一族にかけられているため、これからも遺伝していくのだろう。

度々現れる黒い人も曽祖父ではないだろうか。
壁の黒いシミや身体のアザも、全て曽祖父の呪いを意味するもの。
黒い人がチラつくのは曽祖父の怨念が残り続けて、成仏していないということだ。
「ベッドの下になにかいる」とエドナが怯えていたのも曽祖父だからと考えると他にも色々と納得できる。

ラストの、エドナ、ケイ(エミリー・モーティマー)、サム(ベラ・ヒースコート)が、ベッドに川の字になって横たわるシーン。
まるで死の順番を表現しているようだ。
そして、エドナの身体中に浮き出ていた黒いシミが、ケイの背中にも浮き出ているのを見つけてしまうサム。
「次はあなたよ」と言われているかのようなラストは、終わらない絶望と忌まわしい遺伝を示唆しているのだろう。





☆考察が必要なので、本作は好き嫌いが分かれるかもしれない。
それでも意外と評価は高く、多くの人から支持を得ている。
本作のテーマは『老い』だが、従来のホラー映画にはない斬新な発想だ。

ケイが、ボロボロになったエドナの皮膚や髪の毛を剥ぐシーンはややグロい。
あのシーンは呪いではなく、単純に老いと死の表現だと感じた。

儚く脆く散る…。
『老い』と『死』を深く感じる作品だった。