みかぽん

アシスタントのみかぽんのネタバレレビュー・内容・結末

アシスタント(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

トップが腐っていると下々を死んだ魚の目にさせ、自覚のないまま背鰭尾鰭までもを腐らせるのね。
女はお茶汲みしコピーを取り配るもの、な扱いを受けたことは仕事人生の中には当然あって、もしここでうっかり、男女雇用機会均等法、、なんて〝屁理屈〟を口走ろうものなら「あいつ生意気だから一生嫁に行けないな」の陰口を叩かれるの流れ。なのでそれはもう、淡々とやり過ごしましたけどね😑😑。
それどころか本作の主人公、ジェーンは同僚の電話先にかかったヒステリックな会長嫁の不満の吐け口→彼女の夫に向けられている怒りのスポンジ役に当てがわれ(…なんて生優しいものじゃなく、まるで痰壺のような扱い😰)また昼食を配り歩けば同僚に、これってターキーじゃん。俺、チキンって言わなかった?と無表情のままそれを机に投げられたり(だったら自分で買いに行けっっ💢)。

静かな緊張感を持つ展開の中で、私自身は徹頭徹尾でアドレナリンが噴出。心臓ばくばく溝落ちはキリキリ。自分事じゃないのに、もう悔しくて悔しくて胃に穴があきそうだった…😭。

これは有名大学を卒業し、400人の応募者から選ばれ、プロデューサーへの夢を持って就職を果したある若い女性の一日。私なら一週間で芯まで削られ消えてしまいそうだが、彼女はそうならないために、何も感じないようにとばかりに感情を押し殺す立ち振る舞いをし、それがまた痛々しく私の胸に刺さる。
驚くべきことは、これらは(ワインスタイン率いる?)つい最近までの映画制作会社でのお話しってこと。
金を取ってくる人間、それに従う男たち、未来を餌に彼らが脱ぎ散らかした洋服を拾い歩くような下支え、あるいは性的要求に耐える女たち。
歪んだヒエラルキー構造の中、彼女たちは全くもって家政婦か性の提供者でしかないのだ。
そして家政婦側の扱いであるジェーンに対し、上司は「君の他に代わりはいくらでもいる」「安心していい。君は彼のタイプじゃない」「大丈夫、彼女たちは彼をしっかり利用するのだから」の言葉を投げかける。

この日は彼女の父の誕生日。おめでとう、の娘の電話に父親は、仕事はどうだ?と案じて問う。これに娘は、ストレスはあるけど何とかやっている、と返す。父は、最初暫くは皆そんなもんだ。でもそこを頑張ればそのうち仕事にも慣れて、、と、娘が置かれている姿を父なりの想像(が勿論、実情はそんな生易しいものではないのだが)で返すと、「うん、そうだね。頑張るね」とこれ以上ない娘の役割を演じ、父親を安心させて彼女の長い長い一日が終わるのだ…。

本作に対し、淡々としていて退屈。何も起こらない、の感想を持つ一定数の鑑賞者がいるとのこと。
しかし私は、彼女への仕打ちが、彼女の絶望、声にならない叫びがまるでナイフのように私を切り付けてヘトヘトだ。
兎にも角にも、観終わって数日を経てもその傷口は全く塞がらない、残酷搾取の物語…😑😑😑。
みかぽん

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