Mai

ファーザーのMaiのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.7
次から次に展開が気になるようなハラハラ物ではなく、ゆっくりと静かに時間が過ぎていく。

8月に惜しまれつつ43歳の若さで亡くなった俳優チャドウィック・ボーズマンが受賞すると思われていたアカデミー賞で、言ってしまえば"意外"な受賞となったのが、この作品のアンソニー・ホプキンスだ。授賞式に登場しなかった事でも話題になっていたが、個人的にはこの作品での彼の演技がどんなものなのかとても気になっていた。

認知症を患った父(アンソニー・ホプキンス)の目線で進んでいく本作。彼を介護する娘(オリヴィア・コールマン)の大変さと、認知症のため変化に戸惑う父の葛藤が、観ていて辛いほど鮮明に描かれていた。誰もが訪れる可能性のある未来だと分かっていながら、現実か幻か分からない映像にまるで蜃気楼の中にいるような気持ちになってしまった。

アカデミー賞受賞のアンソニー・ホプキンスの演技は序盤から凄いのだが、特にびびらされたのは終盤の母親を呼んで泣くシーンだ。これがレクター博士を演じた俳優なのか。役柄への入り込みが凄まじく、目が離せなかった。彼がこの役を演じたからこそ評価された作品だとすら感じたのだ。

オリヴィア・コールマンのなんとも言えないもどかしい演技も素晴らしかった。父親をぞんざいに扱う恋人に対して腹が立つのもものすごく分かる。

「シャーロック」のマイクロフト役でお馴染みのマーク・ゲイティスや、「ザ・ネバーズ」のオリヴィア・ウィリアムズが出ていたのが嬉しかった。

ヘルパーとしてやってくる金髪の美女はイギリスの新進女優イモージェン・プーツ。笑顔がめちゃくちゃ可愛かったけれど、恋人のジェームズ・ノートンの顔がちらついて萎えた(笑)羨ましい…

1時間半程の映画でありながら、観終わった後滝のように感想が出てくる作品だ。
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