づかし

ファーザーのづかしのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0
“さっきまで誰もいなかったはずなのに、気付けば自分の家でくつろぐ見知らぬ人“

“さっきから自宅にいるはずなのに急に現れたかのような見覚えのないキッチン"

映画冒頭から、周囲にまき起こる事象は、あまりに滅茶苦茶でどう考えても説明がつかない。何が起こっているのかわからず、漠然とした不安に包まれていく。

この映画を観る前に必要な情報は上記のみかと思います。このレビューを目にした方には是非、以下感想を含むすべての前情報を排除して鑑賞されることをお勧めします。

やたら煽る最近の広告宣伝等のせいか、あらすじ流し読みで漠然とした内容認識で観に行くのがベストなのかもしれないと思う今日この頃。

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ぐちゃぐちゃにかき混ぜられた記憶と現実

主観と第三者視点がごちゃごちゃに入り混じった作品です。

新手のSFでも見せられているかのような不可解さと、観ているだけで神経がすり減っていくスリラー映画のような気味の悪さ、そして漠然とした恐怖。

話が進むにつれて、この感情が誰が抱いている感情なのか、何を擬似体験させられていたのかを知ることになります。

何もかもわからない中、自分の現在位置を見失いそうな時、時計だけが自分のいるところ(時間)を教えてくれる。だから執着する。時計を確認したところで、それまで何をしていて何時間経ったかなんてもうわからなくなっていることにも気付かずに。

受け入れられない現実ほど意識に残らない。自覚と現実の乖離は、悲しいほどに大きなものとなっていて、望んでか否かはわかりませんが、アンソニーは現実と乖離した“記憶“の中を生きていくんだなと切ない気持ちになりました。
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