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モルエラニの霧の中のプレコップのレビュー・感想・評価

モルエラニの霧の中(2019年製作の映画)
4.6
土曜日、新宿にいて暇だったのでこのアプリで「今観に行ける映画」機能を眺めてたら本作が目に入ったので鑑賞してきました。チケット購入時、座席がほぼ満員なことにびっくりしながらそれまで全然気づいてなかったのですが、なんと舞台挨拶付き。坪川監督、菜葉菜さん、そして日本映画界の生ける伝説、香川京子さんがご登壇されていました。香川さんの御年92歳(!)と思えぬ若々しさに衝撃を受けるとともに、生で見られたことに感無量でした。3人は本作の公開前に亡くなってしまった大杉漣さん、小松政夫さんや、先月亡くなった坂本長利さんとのエピソードを語っていて、本編前から目頭が熱くなりました。

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室蘭市在住の坪川監督によるオムニバス作品で、街が主役の群像劇ドラマである本作は、室蘭市民や地元施設が多数登場する、いわゆる町おこし映画のように見える。しかし、公開まで5年以上の撮影期間と3時間半を超える上映時間を誇り、その長さと名優&室蘭市民のアンサンブルから、見る人を選ぶ映画になっている。しかし、個人的にはかなり惹きつけられた。

全7話から構成される本作に共通して言えるのは、ある場所に根付いた人や物がその場から去る、別れるストーリーになっていることである。この「場所」というのは土地だけでなく今世や自分自身という存在への意識も意味している。その様々な別れを本作は最大限賛美する。特に、3話目「冬の章」と最後の「初冬の章」は愚直なまでの送別の讃歌で胸が震えた。

舞台となるのは青年科学会館や水族館など室蘭市内の施設が多く、いわゆる紀行映画とは一線を画すが、室蘭の記憶を記録するとともに、普遍的な美しさを表現することに成功している。
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