囚人13号

大空の闘士の囚人13号のネタバレレビュー・内容・結末

大空の闘士(1933年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

クレジットにカール・レムリ・Jrの名が出るのでユニバーサル映画と分かる。
フォードとフランク・ウィードがタッグを組んだ最初の作品らしいが、脚本は特別面白いわけでもなく、感じのいい話でもない。『肉体』の例もだが「投げた」云々よりもまず、映画自体の興味を指摘すると本作は不快さもなく、男の世界に不倫というテーマを持ち込んでしまった失敗を除けば単純に楽しめるがやはり傑作ではないかな。

郵便パイロットという危険な任務に命を賭ける男たち、事故が起きたら自分が代わりに飛ぶというポリシーを持つ主人公は医師から視力の低下が懸念されているが、仕事だけは辞めない。しかし危険な職種の為、みるみるうちに仲間が不足し死者も出るが、構わず大嵐の中を自分が代わりに飛ぼうと管制塔を出る時のやるせなさが良い。
これまでの登場人物たちとすれ違う。緊急着陸した旅客機の乗客の他、夫が事故死したのをいいことに出ていこうとする女と浮気相手である凄腕パイロット、勝手に新しい職を見つけていた同僚、昔乗客を見捨てて自分だけパラシュートで脱出していたという操縦士…。ろくな者がいないのだと、この一瞬で改めて総ざらいする。

飛行場面は操縦する様子よりも、華麗に空を舞う機体そのものをスペクタキュラーに見せる。ウェルマンの『つばさ』とは違い、ただ表情もわからない操縦士を見せるより、サーカスのように飛び回る飛行機を見せたほうが迫力があるとカール・フロイントは知っていたらしい。本作は戦争映画ではないのにも関わらず…。

演出に関してはあまり書きたくないが、窓についてだけ、外の大雨や嵐/雪を強調するために管制塔内の大窓が役立っているが、やはりそれだけではなかった。凄まじいのは一言の会話もなしに女が窓越しに夫の死(遺体は見えない)を突きつけられる場面で、窓の隅が凍りついて自然と円形のクローズアップが出来上がっていることも驚くが、吹雪の音以外何も聞こえないこの短いシークエンスはサイレント時代からの監督にしか演出できない。

主人公の死を予感させる後ろ姿のクローズアップも注意してみると窓ガラス越しではないか。カメラレンズの他にもう一枚透明な壁を隔てることで観客との間に更なる距離感が生まれ、不安を煽る。しかも本作は一種のプロパガンダであるにも関わらず、言ってしまえば迫力のある飛行シーンよりも感情を揺さぶられるショットが地上に存在しているという異常事態。
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