Kientopp552

ミッドウェイ ~運命の海~のKientopp552のレビュー・感想・評価

ミッドウェイ ~運命の海~(2019年製作の映画)
2.0
 本作の主人公Norman Francis Vandivierヴァンディヴィエー(名前からして、フランス系アメリカ人か)は、1942年6月4日(日本時間では、21時間の時差があるので5日)、太平洋戦争における転機点となるミッドウェー海戦において、航空母艦Enterpriseエンタープライズ号より、艦上爆撃機「Dauntlessドーントレス」に搭乗して、日本の航空母艦を撃滅するために発艦した。さて、彼は、その任務を遂行できたのであろうか。

 映画は、しかし、攻撃の在り様を意外とあっけなく済ませた後は、攻撃後のN.F.ヴァンディヴィエーの運命を語り続ける。つまり、本作の意図は、ミッドウェー海戦の展開を綴ることに眼目を置いているのではなく、撃墜された後の、恐らく数日間漂流したであろうN.F.ヴァンディヴィエーの運命を代表させて、この海戦でアメリカ側の飛行搭乗員が舐めたであろう海上漂流の辛さを、N.F.ヴァンディヴィエーの人生の個人的回想を一部交えて、描いたものである。

 本作の監督であるMike Phillips Jr.マイク・フィリップスJr.は、約15年を掛けて実際にあった出来事を映画化しようとしたと言う。脚本は、Adam Kleinアダム・クラインが書いたことにはなっているが、原案はM.フィリップスが、当時の経験者の回想録などを参考にしながら、作っていたものであり、A.クラインはこれを手直ししただけであったと言う。製作もM.フィリップスが関わっており、この彼の拘り方は、尋常のものではなく、調べてみると、やはり、彼の個人的な関心があったのである。

 実は、本作に登場するThomas Wesley Ramsayラムゼイも、N.F.ヴァンディヴィエーと同様に、エンタープライズ号より艦上爆撃機Dauntlessに乗って、空母加賀への攻撃に加わり、その際に撃墜されて、八日間漂流した後、幸運にも、ある偵察・爆撃機用飛行艇PBYカタリーナ(双発で六人乗り)に救助されたのであった。しかも、このカタリーナ機のパイロットは、Th.W.ラムゼイのハイスクール時代のクラスメートであった。Th.W.ラムゼイは、1943年4月に、Navy Cross海軍十字章を授与された。Th.W.ラムゼイと同様に、N.F.ヴァンディヴィエーも、また、本作に名前だけ登場する、エンタープライズ号の航空群司令であったWade McCluskyマクラスキー海軍少佐も、その戦功によりNavy Crossを授与されている。W.マクラスキーの、燃料切れによって母艦に帰れないかもしれない状況の中、さらなる敵・航空母艦捜索に踏み切った「勇敢な」判断が、アメリカ側をミッドウェー海戦における勝利に導いた一つの、人間的要素であった。
Kientopp552

Kientopp552