MayuShimada

プロミシング・ヤング・ウーマンのMayuShimadaのレビュー・感想・評価

4.5
不思議なことに見終わってもなにもすっきりしない!!
復讐はできた、でも解決はできていない。「解決」は客観的だけど「復讐」はいつでも主観でしか行われない。だからこそこの映画の問題を提起する力はぐっと強まったのでは?

結局これ、最初から最後までキャシーのやりたいようにやっただけなのよね。だから、キャシーの行動に正しいもクソも無いと思うの。キャシーの中ではもちろん「正義」なんだけど、どこからどうみても正当なことかと言われると疑問が残る。間違うことは誰にでもあるし、あなたは誰かを罰することができるほど清廉潔白ですかと聞かれて躊躇なく深く頷ける人なんていないと思う(そして躊躇なく頷いた奴は限りなく怪しいと思う)。しかもやり方はとても自己満足的だし、酷いことをした奴らが公的に裁かれるよう促したわけでもない(あの男性が本当に悔やんでいればもしかしてちゃんと裁けるかも?)。
しかし、キャシーに対して共感はものすごくするんだよ。だから考えちゃうんだよ余計に。キャシーの仕返しが成功すると嬉しい、スカッとする、でも、叩いて埃が出る奴を憎み続けていたら結局すべての人間を憎むことになるのでは?
じゃあいつ許せばいい?いつまでなら憎んでいていいんだ?どうやって他人を信用できる人間に戻ればいい?けじめはどこにあるの?

もう一つ迷宮入りしているのはですね、「被害者を責める風潮」ですよ。
露出の多い服を着ていたり、酒に酔っていたり、異性関係が派手だったりすると、そんなことをしているから被害にあうんでしょ?っていうアレ。確かに、確率は上がるかもしれない。でもさ、だからしょうがないよね~は違うじゃん。
例えばよ、家の鍵をうっかり閉め忘れて外出してしまいました、帰ったら空き巣被害にあっていました、慌てて通報して家族や友人にも助けを求めました、「まぁ、鍵閉め忘れたのお前だしな。え?金目のもの全部盗られたから少し貸してくれって?自分でなんとかしろよ大袈裟だな」って言う?言わないよね。貧乏で経済的に助けられなかったとしてももうちょっと同情するよね。
こういうことよ。なぜ!物質的な被害だと話が早いのに、なぜ!
なかには被害にあった女性に対する嫉妬心から被害者を責めるとか、私にはそんなことは起こらないと安心したいがために被害者側のアラを探すなんていう人もいるみたいですが、私はその説もしっくりこない。
もうこれは、「女性は性的に控えめであるべき」とか「女性から誘ってはいけない(男性から誘ってもらえる女性は格上)」みたいな暗黙の認識がこの世にあるからだと思うんですよね。
その認識を一気にこの世から拭い去ることは不可能ですけども、せめて、被害にあって苦しい思いでなんとか生きているそのときにアラ探しする人がいなくならないかなと思う。これは中傷しようとする人が思いとどまってくれれば実行可能なことだから。

あと、シンプルに、誰が性被害にあいたくて肌を出したり酒を飲んだりしますか?誰が都合よく扱われたくていろんな人とデートしますか?って話よ。
犯罪にあいたくて生きてるやつなんかおらん。みんな自分の人生楽しんでるだけだ。

これだけいろいろ考えちゃうのに、映画内では何一つすっきり片付いてない。そこが気に入った。判決を下せるのは誰なんだろう?誰も傷つけないで生きてきた人なんていない。自省して同じ過ちを二度と犯さないようにするしか解決策はないのでは。
結局個人の良心頼りなところがなんとも歯がゆい。

つい最近似たようなことが起こったので、「私の何を知ってる?」って聞くキャシーにそれな!!ってなりました。
私の好きな食べ物も、好きな色も、休日の過ごし方も、嫌いな生き物も、下の名前すらも知らないのに「大切な友だちだから」とかぬかしやがってな。お前じゃあ男友達にクリスマスだからって花束渡すのかよ?渡さねぇだろ?あ?
って思いました♡下心しかないやつみ~んな吹き飛べ♡
MayuShimada

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