Rocko

プロミシング・ヤング・ウーマンのRockoのレビュー・感想・評価

4.6
アカデミー賞作品賞含む5部門にノミネートされ見事に脚本賞を受賞。その製作と脚本を兼任したエメラルド・フェネル監督については先日レビューしたドラマ『キリング・イヴ』シーズン2に記した通り、『ミナリ』や『シカゴ7裁判』などの有力なライバルを抑えて受賞を果たした大注目のクリエイター。
妊娠中の撮影で、終了の数週間後に無事男の子が産まれたそうです👶

ジェンダーバイアスを表面化させた今作でフェネル監督がアカデミー賞監督賞の候補者となった史上7人目の女性であり、初のイギリス人女性で受賞したことを考えると度々指摘されているアカデミーの根深い差別構造が改善されつつあるのかなと感じました。
手掛けたドラマのシーズンがかなり好みだったのと脚本賞受賞でかなり期待しての鑑賞でしたが、期待値を余裕で超えて来るセンスでした!

予告で何度も観た泥酔したキャリー・マリガンの「What are you doing?」アダム・ブロディはドラマ『The. O.C.』の時から髪型もあまり変わらなくて、何となくいい人の固定観念をぶち破るオープニング。
重いテーマとリベンジスリラーをキュートな衣装やアメリカン・ポップカルチャーに乗せてラブストーリーと絡めながら進めて行く展開はお見事でした。ラブストーリーがフラグに感じるホラー好きな人絶対いますよね?幸せそうな姿がゾクゾクしましたねw
ちょうど鑑賞日のお昼にキャリー・マリガン演じるキャシーと同じような色のネイルを娘に塗っていたので、手にやたらと目が行きましたが、ネイルやメイクからスーツ、ワンピース、セーター、セクシーコスチュームとバリエーション豊かなファッションの使い方が上手くて観てていて楽しかったです。

キャリー・マリガンは主演女優賞を獲っていてもおかしくないぐらい今までのキャリアで素晴らしい演技でした。
女性の復讐劇をテーマとした単純なリベンジスリラーではなく、フェミニズムストーリーの枠にもはまらない、色々な要素を詰め込んで完成させた独自のジャンルの型破りな面白い作品でした。
脚本賞を受賞しただけあり、展開が全く予測できず最初から最後まで瞬きを惜しむぐらい映像も魅力的でめちゃくちゃ面白かったです!

この映画のストーリーや感想はネタバレなしで書くのが非常に難しいので、鑑賞する予定の方は以下、読まないことをオススメします。

以下、ネタバレ↓↓↓





アクション映画の脚本のような単純なリベンジスリラー展開ではなく、自分たちの社会的地位や生活を守るためだけに意図的に事件を闇に葬ろうとする加害者に対して、辛い過去でも真実に向き合おうとする被害者という対立構造の中での現実的な復讐劇。
常に銃や刃物を持ち歩いている描写はなく、力では敵わない男性に立ち向かう女性を描いているんだというのが伝わって来てリアリティがありました。
自分も怖い事件を聞く度にスタンガンや刃物を携帯しようかと思っても銃刀法違反で捕まるのも嫌なので結局持ち歩いていませんが、車の中に水没して出られなくなった時用の緊急脱出用ハンマーは常備しています。
アメリカなんだから普通は男に復讐する覚悟で脅すつもりなら銃を持って乗り込むでしょう。敢えてそれをせず(ただ監督が銃規制推進派なのかもしれませんが)、ラストのシーンに持って行ったのは「力の強い男」の前では成す術がない非力な女性に起こる事件というのが凄くリアルに伝わって来て評価が高くなった理由でもあります。

酔った上でのレイプ事件は欧米の問題だけではなく、同級生でも酒を飲むと豹変し、理性を失い手を出す映画のようなクズ野郎どもが日本にもいましたよ。たまたま理性ある1人が止めて事件にならなかったこともリアルに体験してきたので、こういった今まであまり表立って問題にしてこなかった性暴力事件をドラマ『13の理由』や今作で浮き彫りにして社会問題として知らしめるのが重要なんだと思います。
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