菩薩

とらんぷ譚の菩薩のレビュー・感想・評価

とらんぷ譚(1936年製作の映画)
4.8
盗人は猛々しく、憎まれっ子は世に憚り、正直者は馬鹿を見るのが人の世の常。人生を運命とイカサマの狭間で生き抜いたとある男の一代記、をギトリの一人称視点でベシャリ倒す80分。淀みなくサラサラと、それでも激流の如く流れ去る激動の人生、回転扉に押し出される様に、今日はこちらで明日はあちら、手を替え品を替え顔を変え素性を変え、それでも受けた恩義は忘れられず、そんな人間らしさが皮肉にも積み重ねた富の全てを薙ぎ払って行く。一見すると人生巧者のギトリならではの語り口、軽妙洒脱との表現がピタリと合うわけだが、この寄る辺無さは多少なりとも寂しさを感じさせるものであり、最後のキーアイテムが「時計」と言うのも、なんだか「C'est la vie.」だなんて気になってしまう。なーんて言うのも勿論嘘で、これはあくまで「喜劇」であり「悲劇」ではない、時計の針と同じ様に回り続ける運命のルーレット、どの穴に玉が落ちるかなんてのは…結局のところ誰にも分かりゃしないってか。
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