えびちゃん

とらんぷ譚のえびちゃんのレビュー・感想・評価

とらんぷ譚(1936年製作の映画)
4.5
イイ!トランプをめくるタイトルバックから監督がひとりひとり呼んでいくスタッフクレジット、導入からセンスがいい。無声映画風のつくりも洒落てるんだ。叙述がアイロニックでこれまたイイ。こんなイケてる作品が1936年だなんて信じられん。演出がなにもかもときめきが詰まっててギトリは映画の神様なのかと思う。
あるひとりの壮年男性の回顧録。少年時代にビー玉買うためおうちのお金に手をつけたことから人生があれよあれよと思わぬ方向へ進んでゆく。一夜にして12人いた家族が自分以外全員死ぬという悲劇なはずなのにめちゃくちゃおもしろい…。不謹慎だなと思うじゃないか。でも12人が取り囲んだテーブルからジャンプカットでひとりきりになるの、笑わずにいられん。いきなり絶望のスタートダッシュをきって、なかなかのハードモードで人生を走り抜けていくが、綱渡りの人生は常におかしみで着彩されていく。悲劇と喜劇は紙一重なのだ。
自分の人生を切り拓いていく生き方はとても格好良いと思うものの、こうあるべきみたいな風潮だよな。でもこの主人公のようにでっかく帆を広げて風のまま波のままに進むということも悪くはないんじゃないかと思えてくる。わたしはねぇ、こういう自分の人生を180%くらい楽しみきってる人がだいすき!
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