Ricola

仔鹿物語のRicolaのレビュー・感想・評価

仔鹿物語(1946年製作の映画)
3.7
アメリカ開拓時代を舞台に、家族愛と少年の成長、そして生命の尊さと自然界の厳しさが描かれる。

美しい朝焼け、静かに流れる大河、生い茂る緑。こういった豊かな自然が尊いものであることが、よく伝わってくる映像美にもぐっとくる。


息子を理解し、子供を亡くした妻に寄り添うグレゴリー・ペック演じる素敵すぎる父親像に、ひたすら感嘆しながら観ていた。
このような人格者の役がやはりペックにはぴったりだとしみじみ感じる。
ときには家族の先頭に立ち、ときには陰ながら家族を見守り支え鼓舞する。
息子に厳しく素直になれない母親に対しても、父親は愛情深く接し続ける。

自然の描写に関しては、子鹿に限らず生き物の逞しさとその神秘が捉えられていた。
特に、熊狩のシーンの臨場感には驚かされた。なぜなら資料映像かと疑うほどのリアルさ(本当に資料映像かもしれないが)と迫力なのである。素早く動く熊を、片時も離さずにカメラは追い続けているのだ。
その様子を目撃する親子の反応ややり取りからは、彼らの絆と子の成長を感じ取ることができる。

子鹿との関わりを通じて描かれる少年の成長ぶりが、父親の優しい視点と彼らを取り巻く大自然のなかで情感豊かに描かれる。
少年は自分よりも小さないのちを身近な存在として接していくことで、自然や社会の残酷さを知り、傷つくもそれを受け入れて前を向いて生きていく。

自然や人生そのものの厳しさに焦点を当てているが、教訓じみた胡散臭さは感じず、家族愛と生きることについて素直に考えさせられる作品だった。
Ricola

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