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子供はわかってあげないのワンコのレビュー・感想・評価

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
5.0
【意識と無意識の間にあるもの/親子になること、人を好きになること】

この「子供はわかってあげない」は、思いがけず強く印象に残る作品になった。

原作のことは知らなかったのだけれど、興味深いものなのだろうと想像もする。
そして、映画も秀逸な作品に仕上がっていると思う。

この夏公開の、いわゆる大作ではない邦画のなかでは、「サマーフィルム」と、この作品がオススメかもしれない。
それに、敢えて選べと言われたら、僕は、こっちの方が好きかもしれない。

子供は、子供になろうと思って、自ら、そこにいるわけではない。

親だって、子供が出来て、だんだん親らしくなっていくのであって、親になるんだと敢えて意識してるわけではないだろう。

だが、物心つく前に離れ離れになった、この親子、美波と藁谷友充は、敢えて、子供になろう、親になろうと思ったのではないのか。

だから、美波は、水泳部の合宿期間プラス1日を、父親の家で過ごしてみたのだ。

藁谷が、門司くんに対して、酒を酌み交わそうとするのも、美波の父親らしく振る舞ってみたかったからに違いないのだ。

そして、藁谷が、相手の意識をどのように読むのか説明する際に、例に取られたミルフィーユ。

親子になるのに、もともと意識をすることなんてないと思うと書いたが、当然、無意識にでもない。

本当は、意識と無意識の間に、もう一つ重要な何かがあって、親子だとか人間関係に影響を与えているのではないのか。
ミルフィーユの生地と生地の間に滑らせるように……。

親子の関係だって人間関係だ。
意識はしてなくても、親子の関係に次第になっていくのだ。

ミルフィーユという課題に対して、泳げるようになるために水死体のように浮かぶという回答。

教えられて、それを人に教えて、繋がって、広がっていく。
これも、意識するとしないとに関わらず、全くその通りではないのか。

二人は気が付いたのだ。
親子になったのだ。

そして、これは、きっと人を好きになる時も同じだ。

徐々に、そして、いつのまにか意識することになって……。

高橋源一郎さんまで良い味出して、藁谷や門司くん、お兄ちゃん、水泳部のコーチ、お母さんにお父さんなどキャストは皆素晴らしいが、美波こと上白石萌歌さんが光っていたと思う。

なんか、良い余韻が残る作品だった。
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