えいがうるふ

カモン カモンのえいがうるふのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.2
愛おしい。
全編モノクロなのに、どのシーンも豊かで鮮やかな色彩が溢れているような気がした。カメラワークもさることながら、主演二人が名優すぎる。モノクロ映像とセリフだけでこれだけ鮮やかな情景を描けるのなら、いっそラジオドラマでも楽しめるかもしれない。

初対面では確かに、甘やかされてて面倒くさいガキだなぁと思うかもしれないが、自分は案外そういう生意気な小さい人が嫌いじゃないので面白くつきあえる気がする。
センス・オブ・ワンダーなんてとっくに失われた大人がそういう存在から改めて学べることももちろん多くあるだろうが、逆に子どもが思春期やもっと早い時期に、親でも先生でもないナナメの関係で良いオトナに出会えるかどうかって、その後の本人の人生に大きく影響する気がする。だからつい母親目線でジェシーは運が良かったねぇと、しみじみ思ったりしていた。

あと単純に、物心ついてちょっと生意気になってきた頃の子どもが目をキラキラさせて夢中になって何かワケワカランことを語る様子を見守るのが本当に好きなので、それをそのまま尊いものとして扱ってくれるこの作品のありようが嬉しかった。

未来へのそれぞれの思いを語る子どもたちへのインタビュー映像はノンフィクションだそうな。出てくる子供たちがそれぞれ映画の雰囲気に沿ったいい感じのことを語るあたり若干優等生がすぎる気もしたが、児童虐待やら貧困家庭の悲惨さなどを描いた作品が多い中、すんなり前向きになれる内容はむしろ新鮮だった。それぞれの子の話をもっと聞いてみたいと思った。