ひこくろ

カット/オフのひこくろのレビュー・感想・評価

カット/オフ(2018年製作の映画)
4.5
これ、めちゃくちゃ面白かった。

謎の見せ方とシチュエーションの設定がとにかく絶品。
冒頭の、謎の男に怯える若い女性が逃げている途中で死体を見つけてしまう、というシーンで、まずこれはなんなんだと思わされる。
と思いきや、今度はいきなり検視官のポールの話に。
遺体から見つかる謎のメモに書かれていた、ポールの娘、ハンナの名前と電話番号。
慌てて娘に電話をしたポールは、娘が何者かに誘拐されたことを知ることになる。

と、ここまでのつかみだけでも相当に面白いんだけど、ここから映画はさらに加速していく。
ハンナから「誰かに言ったら殺される。エリックの指示を待って」と伝えられたのに、電話に出たのは知らない女性で、「エリックは死んだ」と言われてしまうのだ。
これはネタバレじゃないと思うので書いてしまうけど、ここで、冒頭の女性リンダとボールが繋がる。

以降はこの二人のバディ物のミステリーとして進むんだけど、二人は実際に会うことはない。
ある事情から、電話を通じてのやり取りだけで協力して謎に迫っていく。
このシチュエーションの妙がまた素晴らしい。

犯人は誰で、何の目的があり、連続殺人を犯しているのか。
次々と見つかる遺体にヒントが隠されているのはなぜなのか。
ハンナを無事に助け出すことはできるのか。

二人はだんだんと犯人に迫っていくように見えて、謎はなかなか明らかにならない。
それどころか、ひとつの事実がわかるたびに、謎はどんどんと深まっていく。
しかも、電話でしか繋がれないもどかしさが拍車をかける。

特筆すべきはものすごくシリアスなサイコスリラーなのに、ユーモアセンスが抜群なところだろう。
何気ないひと言や、ちょっとしたワンシーンにクスっと笑えてしまう要素があり、しかもそれが自然で少しも邪魔になっていない。
特に、電話でリンダに最初の解剖を指示するシーンとかは、いけないとは思いつつも、笑いをこらえるのに必死だった。

かなり強引とも思える仕掛けが気になる人もいるかもしれない。
けれど、それが気にならないぐらいに楽しめる映画だと思った。
うん、面白かった。
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