みーちゃん

雨月物語のみーちゃんのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.0
恥ずかしながら初めて観た。後回しになっていた理由は、溝口健二は"封建的な社会や男性の犠牲となる女性を描き続けた監督"で、本作は"男の立身出世を助けるために喜んで身を捧げ、自己犠牲を遂げる女性の物語"と書いてあったから。はっきり言って、そんなの観たくない!と思ってた。

でも実際に見ると印象が違った。決してジェンダーという括りではなく、"人間"に焦点が当てられていて、普遍的な物語だと思う。社会の犠牲や弱者は女性だけでなく、源十郎や藤兵衛もそうだ。

家族という単位で見たときも家父長制ではあるものの、宮木も阿浜も夫に虐げられる悲惨な妻という描き方ではなかった。それが、宮木の「共働きで家庭を築く」や、阿浜の「女が賊に襲われたらその時はその時さ」というセリフにも表れていた。

特に、琵琶湖を小舟で渡るシーン(あれ、狭い空間に親戚縁者オールキャストなのが、エンタメとして、めっちゃ面白い)。途中で引き返して宮木と子どもは下船した。何故わざわざこんなエピソードを挟んだのかな?と考えると、対等な関係性や、「別離」と「再会」が、より際立つ効果があると思う。上手く言えないが、とにかく、最初から妻子を置いて行くのと途中で下ろすのでは、余韻と伏線が全く異なる。

予想を超えてきたのは終盤。若狭姫から逃れた後、更に宮木登場で亡霊の応酬。ここまでなら想定内で、てっきり母子セットかと思ったら、良い意味で裏切られた。ひとり非業の死を遂げ、宮木はずっと子どもの側に居たのか。

物理的にも精神的にも帰る場所がある彼らは強いが、それだけじゃ甘い。上手く言えないが、とにかく、子どもが生きているのといないのとでは、未来も責任もメッセージも全く異なる。

※モノクロとは思えないほど、色彩豊かに感じた。