kyoko

停止のkyokoのレビュー・感想・評価

停止(2019年製作の映画)
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2019年のTIFFは初ラヴ・ディアスから。
休憩なしの4時間43分はまじで尻がもげるかと思った。

火山噴火で太陽が隠れてしまった2034年の東南アジア。
よく考えてみたら15年後はそれほど遠い未来じゃない。常に国民を監視するドローン(そんなに数ないし撒こうと思えば結構すぐ撒ける。人間型「ロボット」は出てこない。)以外は、異常気象、伝染病の蔓延、マルコス派大統領による独裁、ストリートチルドレンなどなど、今のフィリピンが抱える問題と危機感そのものだった。


記憶を失ったハミーやイケメン叛乱兵フックの美しさに対して、大統領を守る特殊部隊でありレズ関係でもあるマリッサとマルタがなんともいえずグロテスク。動きが止まらなくなる発作が怖いしそれをセックスで鎮めるってのがね。
そして何といっても今作のもうひとりの主役・ナバラ大統領。周囲の裏切りに怯えて徐々に常軌を逸していくさまは時折ユーモラスにすら見える。哀愁を帯びた普通のおじさんフェイスがどこか憎みきれない。

ほぼ静止に近い長回しのカットがハッとするほど美しいせいで、中盤はダレつつも思ったより眠気は襲ってこなかった。そして「黒い雨」作戦というキーワードが出始めたところから物語が急に時限的緊張感を持つ。
なのに、それぞれが迎えた顛末はとんでもなくあっけなかった。
今までの4時間はなんだったんだ、と思わなくもない。

「立ち去った女」も観てないし、尻へ意識を持っていかれ過ぎて、この作品が良かったのか悪かったのか、今作だけではなんとも判断しきれず、とりあえずノースコア。
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