砂場

ファースト・カウの砂場のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.5
ケリーライカートは作品ごとに結構雰囲気が違うのでの本作は楽しみでした。
想像以上にハマってしまい、今年のベスト1です!

冒頭は現代、二体の骸骨、ただ不思議と悲劇性はなくむしろ愛らしくもある。
舞台は西部開拓時代のオレゴンへ、、、いかにも西部劇に出てくるような荒くれ者たち、ただクッキーはそこに馴染めなかった。そのような馴染めなさって自分の若い頃を思い出すとめちゃわかるわ、、、

クッキーはルーと出会いなんとなく意気投合。二人はドーナツを売って一儲けするが、、、

ケリーライカートは、主流に馴染めない人への視線が温かいね。特に西部開拓時代のように厳しい弱肉強食の世界だと弱っちい奴は生き残るだけでもきつい。ああ、あんな時代のアメリカに生まれなくてよかったわ
マッチョな西部劇に対して、ライカートの反西部劇。なんで彼女は西部劇にこだわるのかなとずっと思っていたのだが、今作を見てわかってきたのがライカートはアメリカの家族像、ジェンダー、人種などについて根底から見つめ直したい。そのためには原初の物語、原初の神話である西部開拓時代から語り直す必要があったのでは。

アメリカのリバタリアニズム、新自由主義、マッチョ思想の誕生した地点は西部開拓時代にある。ライカートは人類学者のような手つきでそれら思想の根源を探索しフィールドワークする。
その作業には大きな物語はいらない、無名のまま死んでいった奴らの生に寄り添い、小さな物語に想いを馳せること。

これは地べたから見た『國民の創生』なのだ
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