このレビューはネタバレを含みます
戦後のウクライナを生きる、元兵士の話。
舞台はロシアとの戦争が終わった2025年のウクライナ。
水の配達をする主人公の視線を通して、戦後のウクライナの様子が描かれます。
ディストピアと言うよりも、もはや終末感すら漂う、荒涼とした世界観が印象的で。
戦争が終わったからといって、全てが元通りに戻るわけもなく、地雷を撤去しなきゃいけないし、身元不明の死体を調べないといけない。
生き残った人間達だってPTSDを抱えているし、汚染された土地は今後数十年は住めないという。
「ロシアとの戦いの次は、水と土地を清める戦いよ」という台詞が象徴する様に、改めて戦争がもたらすダメージの深刻さについて考えさせられたし、終わりなき戦いを強いられるウクライナ人についても思いを馳せました。
辛い話ではありますけど、固定カメラで撮られた映像はどこか寓話的な雰囲気があるし、最初と最後で対比的に使われる赤外線カメラの演出もオシャレ。
劇中で唯一ユーモアが感じられる、ショベルカーの湯船も面白かったな~。
まぁ、全体的に話が淡々としていて、流石に死体を延々と検死し続けるのは冗長に感じましたが、あの組織は「ブラック・チューリップ」という実在する組織らしく、ウクライナの現実を描く為には必要だったのでしょう。
戦後のウクライナをそのまま見せるのではなく、ちょっと変わった距離感・視点から切り取った作品なので、実験的で変な映画がお好きな方にも是非オススメしたい作品です。