Uえい

境界線のUえいのレビュー・感想・評価

境界線(1966年製作の映画)
3.5
シャブロル監督唯一の戦争映画らしい。ナチス占領下のフランスが舞台で、レジスタンスとそれを支援する住民と、ゲシュタポなどナチス側とのいざこざが描かれる。

舞台になっている村は丁度、ヴィシー政権下の地域と自由地帯の境目になっていて、川が二つの地域を分断し、唯一橋で行き来ができる状態だった。(以降ドイツ側、フランス側と記載)

戦争で負傷したピエール伯爵がドイツ側にやってくる場面から物語が始まり、ドイツ側住民達の姿が描かれる。ここが一枚岩ではなく、フランス側への逃走を手助けする者もあれば、騙してナチスに密告する者もいるのが印象だった。

ある日、レジスタンスのスパイがナチスによって捕えられた。瀕死の状態で入院するが、そこの医者もレジスタンスで、上手く逃すことに成功する。しかし、ナチス側も黙っておらず、スパイを匿う住民達と、追跡するゲシュタポの探り合いが始まる。

ゲシュタポの将校を演じる人の表情など雰囲気が凄すぎた。実物に似せているようなレザーのコートや、小さめの黒い車もマッチしていた。

全体的に群像劇の様で、色々な登場人物の話が語られるが、戦闘シーン等あまり派手さは無く、モノクロなのも相まってこじんまりとした印象だった。少し似たモチーフの「ブラックブック」を思い出してしまったからかもしれない。

最後、橋の上である事件が起きるが、急に住民の中の社会主義者のおじいちゃんが登場し、ナチスの国旗のアップで終わったのが印象的だった。タイトルの様に境界線で白黒はっきりしているわけでは無く、住民も、もしかしたらナチス内も、善も悪も無かったのかもしれない。アーレントがナチス将校の裁判を記録した時の悪の陳腐さという言葉を思い出す。
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