エネルギッシュな父の語る言葉は身勝手だけど正直で、娘としては苛立たしい部分もあるだろうけど、それゆえに豪快さにつながる部分もあるからチャーミングで憎めない。
そんな父をビルマーレイはとてもよく演じていると思う。
彼の長台詞のシーンがたびたびあるのだけど、表情や所作が興味深く魅入ってしまった。
ストーリーとしては夫の浮気を疑っている娘が豪快な父に振り回されながら夫の身辺を探るというシンプルなものだが、妻を取り巻く状況や不安、ひと昔前の男と今の男の夫としてのあり方の対比などがコミカルに軽やかに描かれていて微笑ましかった。
これもA24が制作に関わっているようなのだけど、A24は時代の変化を明確に打ち出した映画をつくるなと思った。
劇中にA24とわかるシーンやセリフをいれるところはちょっと抜け目がなさすぎるような気もするけど。
自分で買ったと思われる腕時計から父から貰った腕時計に付け替え、最後は夫に貰った腕時計に付け替える。
父から貰った腕時計は夫から貰った腕時計が入っていた箱にそっと大切にしまわれる。
とても象徴的で印象的なモチーフだった。
腕時計といういつも身に着けてそれとともに時を刻むものを誰に貰うかというのは、とても大事なことだと思う。
それだけで幸せな物語だと感じた。