マツタヤ

グリーン・ナイトのマツタヤのレビュー・感想・評価

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)
4.0
パリにあるヨーロッパ最大の上映室とアールデコ建築で知られる映画館「ル・グラン・レックス」にプレミアム上映室が出来たんだそうな。映像の奥行きを感じさせる最新型スクリーンと没入感を高めるサウンドシステム、上映室にはバーカウンターも併設!そして映画のイメージに合わせて色が変化するユニークな照明の仕掛けもあるとのこと。これはパリに旅行行った際にはこんなところで映画でも見てみたいですねぇ。

もしこの映画をみたら照明はグリーンになるのかもしれないですね!タイトルまんまでスミマセン。

同じくヨーロッパでいうとウェールズとかの公共図書館には昔流行した騎士物語が沢山眠っているらしくそれらが現代の読める形で活字化されているもの以外は時代から取り残され忘れられたままになっているというのだから世の中には未だ見ぬ世界がまだまだあるんだなぁと感慨深い。

そんな中、この映画はアーサー王物語の中でも賢明で礼儀に篤いで有名な騎士ガウェインを主人公にした「ガウェインと緑の騎士」を原作にしたもので原作者不詳と冒頭にも出てくる。
イギリスの歴史を彩る詩人たち、吟遊詩人、さらには遊歴楽人といえばよりカッコ良く聞こえるけど、そういった人たちが三句詩などの短い文章の中で人物、事件、描写をわかりやすく覚えやすく歌いながら後世に伝わってきたところがこういった中世騎士物語のロマンだよなあとかひとりごちる。
(ちなみにヨーロッパの古い文学にはギリシャ文学やアイルランド文学など様々あるけれど、主人公を変えただけで話の筋が似通ったものが多い。本作の首を斧で斬り合う話もアイルランドの勇士キュクレインにも登場するし)

そんな騎士物語をデヴィッドロウリー監督が映画化した本作、以前作ったゴーストストーリーともども、この監督が作る映画ってすごい詩的だなあとあらためて思う、静かに淡々と進むのだけれど綺麗な映像と朴訥な音楽で世界に引きずり込まれる感じ。詩的な作風でまさしくこの監督自身が中世の詩人のような雰囲気を感じる。好き。

何よりゴーストストーリーでもそうだったけど、本劇中に流れる歌、フォークが沁みる。とかく配信が主流の現代の音楽産業の中でファストフードのように大量生産、大量消費されてその大半が忘れ去られていく中で、あらためてフォークという古き良き歌、こうして人に歌い継がれていく形がまさしく中世騎士物語自体と重なる。
昔REMのマイケルスタイプが「年寄りが火を囲んで座り、伝説や寓話を孫たちに伝えるという考え方にすごく魅せられている」と言っていたけれど、そんなフォーク的な物語を現代の吟遊詩人といえるようなデヴィッドロウリーによって語られる作品、映画っていう形を通して詩人のように後世に伝える、魅せることができるのも監督って仕事はすごいなあ。まさしく冒頭の特別な映画館で見てみたい映画だった。
マツタヤ

マツタヤ