ドント

BLISS ブリスのドントのレビュー・感想・評価

BLISS ブリス(2019年製作の映画)
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 2019年。ガンギマリ! 新作絵画に行き詰まっている上に家賃は滞納、エージェントやパトロンからは見放されかけていたデジーはヤケクソになってドラッグに手を出す。ブチキメてバーへ行きさらにキメ倒し翌朝起きたら、絵か進んでいる! しかし昨夜の記憶はない。絵のためにもっとキメているうちにワケがわからなくなって血みどろになるブラッディ・アート映画。
 ドラッグとアートの掛け合わせと聞いて「ヤクをキメて描いた絵が売れた! よ~しもっとキメて描くぞ!」なアゲアゲ破滅まっしぐら物語を想像していたが、キメて記憶を失っても、少し進んでいるだけ。なので「ワーッ、早く描かなアカン……」という切迫感と、自分の身に何が起きているのかわからない苦悩が全面に出ていて、グロと血が満載でありながらアゲ感は少なかった。
 そんな絵描き映画なので幻覚(?)シーンもアッパーにアブナいものというよりいわばアート寄り。血まみれで腕とか首とかがもげるし、人体溶解とか相当にイカしているのだが、内省的で籠っている。精神内部でグツグツ煮立っているような具合である。その溜め込んだ分が、終盤の「パァン! できました!」に生きているのだろう。
 主人公のデジーの媚びぬ顔つき、媚びぬ肉体がこの映画に一本ぶっとい芯を刺しこんでいると思う。彼女でなければ何というか、もっと説得力が薄れていただろう。ごちゃつきすぎた内容を彼女の存在感が支えてくれている。裏返せば、もうちょいスマートな内容なら、すごく絵心のある監督であることはわかるので、もっと面白くなったろうなぁと惜しくもある。
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