はぐれ

マーティン・エデンのはぐれのレビュー・感想・評価

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
4.1
身分違いの恋、フィルムに焼き付けられたナポリの風景、文学への目覚めと渇望、ブルジョアジーへの憧れと失望。
原作はアメリカ文学なんだけど紛れもなく純イタリアンシネマで純文学。

主人公のマーティン・エデンが初めて招かれた豪邸に置いてある絵画を見て「この絵は離れて見ると綺麗なのに近づくと点々だらけだ」と評論する場面があるがこれが上流階級の本質を捉えているから面白い。またこれは美辞麗句を並べるだけの文学への評論とも重なるのか。

いわゆる貧困層からの成り上がりのストーリーなのにその成功をした時の達成感や高揚感みたいなものは全然感じさせてくれない。成せばなるがテーマのハリウッド映画とは真逆のアプローチだ。それよりも産みの苦しみや成功をおさめた後に待ち受ける孤独と絶望にフォーカスを当てている点がいかにもイタリアンシネマで好感が持てる。

説明を省いた抽象的なイメージのモンタージュなど独特なセンスが光る演出。時折挿入される粒子の荒いフィルムの質感がたまんなく味わい深い。また好きな監督が増えた。
はぐれ

はぐれ