シネマスナイパーF

KCIA 南山の部長たちのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
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政治ドラマではあるけど、それは広義の話だと思います
知識があったらより面白いのは間違いないが、必要だと過剰に構えてしまうのも勿体ない
シンプルな人間ドラマとして非常に面白かった


数十分前に見た映像をそっくりそのまま回想として流していたのはちょっとどうかと思いましたが、基本的には骨太さを感じさせる

偉大な先人たちのおかげで、左右対称でキメられるとそれだけで高級な作品に見えますし、今作の場合、偏った政治的主張はしない作品のスタンスを表していると思う
「あの頃はよかった」という台詞を交わしていたように、かつては同じ志を持っていた仲間だった
常に何かに怯え、いつ終わるかも分からない自分の存在を憂いている閣下を描き、一元的な悪役と完全に言い切ることはできない存在としている

もちろん、政治ドラマとしての面白さもないわけじゃない
告発者、この映画で言う裏切り者であるパク元部長を巡る各々の思惑とその結末は非常にスリリング
自分の選択に対する閣下の反応で追い詰められていくイ・ビョンホンの顔演技は素晴らしく、ラスト、どちらへ向いますかと問われ、数秒黙るあの時間は必見の凄まじさ

先述した左右対称のキマった画や、政治的主張は持たない作劇など、送られる視線はドライでやや突き放した作品であるため、持つ感情は悲しみや怒り、そして事件の空虚さを痛感する無常観
観賞後に何かを持ち帰らせるのは素晴らしい映画の証です
ある特定の台詞が様々な場面で反復し使われるなど、正攻法の面白さも詰まっています
海外ロケもまた非常に贅沢で美しく、特にアメリカのリンカーン記念堂でのシーンは圧巻でした
大満足


クライマックスのイ・ビョンホンのすってんころりんは今年の名シーンのひとつになること間違いなし
車の空撮はもう完全に韓国映画あるあるだな