ゑぎ

私達はこんなに働いてゐるのゑぎのレビュー・感想・評価

私達はこんなに働いてゐる(1945年製作の映画)
3.0
 昭和20年3月完成の18分の短編記録映画。まずは、開巻とエンディングで二度繰り返される「私たちはこんなに働いているのに、どうしてサイパンはとられたのか」というフレーズに恐れおののくような驚きを感じる。この部分だけを抽出すると不敬な表現のようだが、実は、サイパンを取られて「泣いた」と続くのだ。さらには、言下に、これだけ必死で働いているし、これからもお国のために働き続けるのだ、という強い決意がこめられているのだが、それにしても、キャッチーで、したたかな惹句ではないか。

 軍服の縫製工場が舞台。必死で働く女性たちを、ほとんど微速度撮影(あるいはコマ落とし?)で撮影し、異様なスピード感と熱量を演出する。この演出は、私はあざといと思うが、被写体となっている女性たちの一所懸命さに嘘はないのだろう(全員がこんなに働いていたのかは疑わしいとも思うが)。また、後半になって、一部、高速度撮影(スローモーション)のショットがあり、上手くヒロイックなキャラ造型の演出も盛り込んでいる。

 また、上長(工場長?)のスピーチにも驚かされる。昭和20年は、暦に無い年になると云う。17歳の人は、18歳にならない、19歳の人は、20歳にならない、そういう年だと。意味するところは、それぐらい仕事のことだけに邁進して欲しい、ということだと思うが。別の意味で、預言者なのか、この上長は、と思ってしまった。
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