芋

ソウルフル・ワールドの芋のレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.3
ジョーと22番の世界が交差したことで、夢と現実に折り合いをつけて音楽の講師をしていたジョーは舞台に立つことに固執し、22番は虚無から脱却し複雑な世界の美しさを知る。

人生は選択の連続であり、選ばなかった人生に思いを馳せる暇もなく、また次の選択を迫られる。心と身体が分離した地下鉄の乗客、闇落ちしたソウルたち、22番の虚無トークを興味深く聞く床屋の客。みんな希望を持ちながら社会の歯車となり、摩耗した歯車と化した魂は産廃として捨てられ、また新たな魂が歯車となる。社会は常に代替可能な存在として人間を消費し続ける

人間にはこれまでの膨大な経験を詰め込んだ宇宙があって、ある瞬間に自分の人生にはこれしかない、と感じても数日後には全く別のことを考えているかもしれない。選んだ人生も選ばなかった人生も大切にしているマッチョな美容師のヒストリーが沁みる

接客業をしているせいか、愛想は良いが流れ作業のように働くジェリーにシンパシーを感じた。プロフェッショナルなテリーを少し邪険にしているが、こういう人がいないと職場は回らないのでありがたい存在だなと感じた

一つのことを極めた人も、そうでない人も、夢ややりがいがなくても、生きてもいい。今生きる全ての人々を祝福し、やさしく抱擁してくれる宝物のような作品だった
芋