Foufou

宝島のFoufouのレビュー・感想・評価

宝島(2018年製作の映画)
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当然スティーブンソンの『宝島』を想起するしエピグラフもスティーブンソン。

これはドキュメンタリーなのか? と誰もがなるのではないか。セルジー・ポントワーズのîle de loisirs(レジャー島)が舞台。パリ郊外にはこうした巨大なアミューズメント施設がいくつかあるようです。セルジー・ポントワーズのそれはロメールの『友だちの恋人』の舞台でもあります。

この島をめぐる様々な人々が演ずる一幕一幕を、ときに彼らの独白をオーパーラップさせながらコラージュしました、というのが作品の概要。おそらく出演者は皆素人なんでしょうね。しかし一抹思うのは、素人があんな自然体でカメラの前に身体を晒すだろうかと。事前になされたであろう監督による信頼関係の構築ですよね。これ、並大抵のことではなかったんじゃないかと想像するわけです。あるいは人にいきなり胸襟開かせるような人たらしの天才なのかも。

保護者同伴でない未成年たちがなんとかレジャー施設に潜り込もうとする。あるいは青年らが入場料をケチって裏門を乗り越えようとする。ことごとく警備員らに捕まり、優しく戒められる(カメラの前だから? いい人過ぎて泣ける)。島には老人も来る。移民の家族も来る。ナンパ待ちの女の子たちも来る。人の数だけ島の意味があるってやつですか。

湖の中央に聳り立つピラミッドを見て、「あっ」となりました。セリーヌ・シアマの『秘密の森の、その向こう』の感動的なシーンでこのピラミッドが出てくる。なんだろうと思っていて調べ損ねていたのが、こんな形で再会する。パリっ子にとっての、子ども時代を象徴する重要なアイテムなのかもしれない。通過儀礼に相応しいトポス。

自分の青春時代と重なる部分もあってゆったり寛いで見ていると、ことほどさように単純ではなく、極めて政治的な映画であることがわかってくる。警備員や売店の店員はみんな黒人で、運営側はみんな白人だしね。島を巡る若い人の思惑と、管理者側のオッサンらの思惑の衝突なんてのも仄見える。

宝島といわれれば、たしかにそうかもしれない。
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