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ラ・マルセイエーズのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ラ・マルセイエーズ(1938年製作の映画)
3.8
ジャン・ルノワールが描いたフランス革命。激しい戦闘場面は少なく、市民が自主的に参加していく様子が中心で、人々の思いや決意がまた人々を促し、反旗を翻すうねりがフランス国内に広まっていったことが市民の目線で描かれている。登場人物が人間味あふれていて、人類史上初の歴史の流れを変えた「市民」を描いたのがすごくよかった。

ルノワールらしく悪人がでてこない。宮殿の人々もどこか人間くさい。悪名高いマリー・アントワネットもルイ16世よりしっかりしていて、ステレオタイプではなかった。

本作品の鑑賞後に以前聴いた「コテンラジオ」の「フランス革命」を再確認したら、ルノワールの描写と重なり、おもしろさが増した。

「国民/市民」ということを初めて意識したこと(それまでは臣民)。ルイ16世は政治は下手だったが、人間が大きかったこと。王は愛されていたが、貴族が批判の対象だったこと。餓死するより命かけて現状を変えたい人たちが強かったこと。貴族の中にも市民(の中のブルジョア層)に肩入れする人たちがいたこと等々。

ルイ16世がトマトやじゃがいもを食べるシーンがある。飢饉が起きて飢餓の市民の暮らしを少しは理解しようとした描写だと思う。コテンラジオの受け売りだけれど、ギロチンにかけられる寸前まで、自分が死ぬことは厭わない、それで臣民が幸せであれば、とスピーチしたそう。

フランス革命は複雑なので、よく理解できていないけど、大きなうねりになっていく、支流の一つのマルセイユ義勇軍の歌が血なまぐさいのに、国歌となった理由が少しわかった気がする。


フランス革命を描いた作品は少なく、日常の延長線上に描いたのは本作品だけみたいで(ドラマチックな「レ・ミゼラブル」はあるけど)貴重だと思います。
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