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アニエスによるヴァルダのfilmooのネタバレレビュー・内容・結末

アニエスによるヴァルダ(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

アニエスヴァルダ5本目。
今作の不思議なタイトルはジェーンバーキンを撮った作品のオマージュのようだ。
これまでに観た4作品とそこから導いたヴァルダ作品の特徴についての答え合わせをしているようで気持ち良かった。
最初に見せられた親戚に会う映像でも分かるし、中盤でヴァルダ自ら語ってもいたが「準備して撮るドキュメンタリー」「手を加えて現実らしく撮るのが好き」という発言から『ダゲール街の人々』もドキュメンタリーになるように演出されていたことが想像できた。今作は講演会のシーンが多いけどそれすらも演出の過程で大勢の観客の前で何度も同じことを繰り返し喋った可能性もあるのだなと思った。
アート作品も面白かった。「映画の小屋」を体験してみたい。
『ノワールムーティエの夫を失った妻たち』のシーンで、ヴァルダの他者への興味はその眼差しの奥にある物語なのだと思い『ダゲール街〜』で夫婦の馴れ初めを語らせたことにも納得できた。自分も他者の眼差しに対する興味は人並み以上にあるほうでヴァルダにシンパシーを感じていたけど、自分の場合は他人のバックグラウンドにはあまり興味が無くその瞬間その人が何を考えているかに関心があってヴァルダとは少し違うことも分かった。
『5時から7時までのクレオ』のシーンで「私はフィクションにも事実の要素を入れるの」と語っていたり浜辺を模したインスタレーションのシーンで「私は現実と描写を近づけるのが好き」と語っていて、それはフィクションの中でも大道芸や通行人をそのまま映すという制作過程だったり、素人という現実を演出して描写するというドキュメンタリーの制作過程においても当てはまるが、政治や現実的な問題をフィクションの中で表現しようとする脚本作りにも当てはまっていると思った。
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