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名もなき生涯のogiharaのレビュー・感想・評価

名もなき生涯(2019年製作の映画)
3.7
『レ・ミゼラブル』『名もなき生涯』、たまたま同日鑑賞した2作品だったが、どちらの作品も、社会構造的な問題がもたらす罪なき者の出口なき不条理を描いている、という点で共通していたように思える。
それは前者では暴力の連鎖によるカタストロフの頂点で物語を断ち切ってみせることによって、後者では正義を貫いたフランツの死によって描かれている(名もなき生涯のほうは、作中一貫した美しさも伴って、カタルシスさえ感じたが)。『パラサイト』にも言えるが、いよいよ作品のテーマが解決困難な社会構造を問うものになってきた。
たとえば『レ・ミゼラブル』における暴力や『名もなき生涯』における個々人の凡庸さというのは、比較的解決容易なものだとも思える。しかし、彼らにそうさせたのは何か?全体主義における悪の凡庸さに関して、ブリュンヒルデ・ポムゼルが「私に罪はない」と言ったことは根深い問題を示している。
また、テレンス・マリックの美しさというのは、映像の美しさというよりストーリーの清廉さみたいなもので、作品の強度としての美しさという意味ではタルコフスキーほど洗練されていないと感じた。
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