ogiharaさんの映画レビュー・感想・評価

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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

3.7

音のない漫画原作に上原ひろみが作曲・演奏で全面的に協力した映画。2時間にまとめると都合よく話が転がりすぎると思わざるを得ない箇所もちらほら。それでも演奏の興奮は充分以上に伝わってきて、自分もプレーヤー>>続きを読む

アウステルリッツ(2016年製作の映画)

4.0

ザクセンハウゼン強制収容所跡地のメモリアルに訪れる観光客を異常な長尺カットで定点観測した映画。観光客を映してはいるが、動く観光客にフォーカスが追従するわけでもなく、カメラは厳格に統制されたフレームのな>>続きを読む

蛇の道(1998年製作の映画)

3.2

工場内での撃ち合いでかなり冷めてしまった。序盤はスリリングだったが、後半は緩慢な印象。結局哀川翔は何がしたかったのか?数学教室の女の子はどういう存在なのか?
考えられているのかいないのかよくわからない
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関心領域(2023年製作の映画)

4.0

ヘス邸住人のヤバいヤツレベルには何段階かあるらしい。だからこの映画は、彼らはまったく普通のひとで現代に生きる私たちも決して無関係ではないとも、あるいは逆に、彼らはまったく理解不能の悪魔だったとも言おう>>続きを読む

野いちご(1957年製作の映画)

3.7

確かタルコフスキーのオールタイムベストに選出されていた作品。オジサンの座り方が『ノスタルジア』のそれだし、色々と参照元が伺えて興味深い。
一度見ただけでは20代の自分の好みにはあまり刺さらなかったが、
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ブルーベルベット(1986年製作の映画)

3.5

変人がやたら出てくる以外は大衆的なサスペンス映画だと思った。iPadで鑑賞したので映画体験としては不充分だったが、カイル・マクラクランやイザベラ・ロッセリーニ(イングリッド・バーグマンの娘)の美貌のド>>続きを読む

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

3.7

やり場のない怒りが暴力となって表出する。彼が事件を起こすに至るプロセスを見せられて私たちは、彼に(彼は)どう向き合えばよかったのか、という問いを抱かざるを得ない。その問いにこたえる難しさに、本作が作ら>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

4.0

まずアピチャッポン作品に共通するのは構図が素晴らしいこと。絵画的な構図と美しいタイの自然、心地のよい環境音、それらの映像形式だけで優れた映画として成立してしまっている。
内容も意欲的で、此岸/彼岸、動
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レクイエム・フォー・ドリーム(2000年製作の映画)

3.7

観た後に知ったが、主人公のハリーは若きジャレット・レトだった。当時からおそろしい才能だ。
観るものにアディクションを追体験させるような演出。社会的に不安定なひとびとのあいだにこそドラッグは拡がり、彼ら
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光りの墓(2015年製作の映画)

3.7

眠りによって「土地の記憶」と接続する、という考え方は村上春樹作品に出てくる「井戸」っぽい。タイの風俗的な映像がベースにあるのにもかかわらず、SF的な治療装置が導入されたり、空にゾウリムシがぷかぷか浮い>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

人間が自然へ干渉し、都会が地方へ干渉し、そして自然が人間へと干渉する円環が描かれている。
他者への干渉(いわゆる「贈与[gift]」)は生きるために不可欠なある種の原罪であるが、劇中でタクミはバランス
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グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

4.0

ウェス・アンダーソンならではの色彩・厳格な構図が美しい映画で、加えてめちゃスリリングかつ笑えるストーリーで、大満足だった。
最後のゼロのセリフがともかく重要だ。グスタフが目指した来るべき理想の人間社会
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ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003年製作の映画)

3.5

トリロジーのなかではいちばん面白く、3時間20分があっという間に観れてしまう。とはいえ、「指輪を火口に落としに行く」だけの物語がどうして3部作トータル9時間もの大作になってしまうのか!

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(2002年製作の映画)

3.5

前作よりも戦争シーンの迫力や自然の崇高さが増していて見応えがある。

ロード・オブ・ザ・リング(2001年製作の映画)

3.0

教養のため観た。こういうファンタジー映画は趣味ではないけど、ヴィゴ・モーテンセンが今とはかなり雰囲気がちがうイケメンだ。

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.3

再度鑑賞予定ですが、初見での感想をメモ。
ノーラン十八番芸の、観賞者に極度の緊張感を強いる音響と編集の合わせ技は本作でも健在。主演のキリアンと助演のトニー・スタークはオスカーに相応しい怪演。IMAXで
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.2

前回をも上回る大スペクタクルで、ともかくIMAXでの鑑賞が、最高の映像体験のための必須要件になっている。(IMAXを楽しむコツは、視界すべてをスクリーンで埋めること。ディズニーシーの「ソアリン」の感じ>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

障害者への接し方の説得力があると思った。登場人物がみな率直で親しみがあるのは前作『ケイコ』から通じていて、少し無害すぎると感じたほどだ。全体をとおした抑制的な表現も前作から引き続いており、ふたりに恋愛>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.7

「夜明けのすべて」にも共通するが、人物がみな大変正直で率直なのが、全体としてあたたかい映画の雰囲気をかたちづくっている。キャラクターの素直さだけなく、キャスティング・演技・ロケーション・脚本等のあらゆ>>続きを読む

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター(1993年製作の映画)

4.5

試写会にて再鑑賞。
ざっくり言えば女性の主体性を扱う映画で間違いないし、その意味でアクチュアルな映画なのだが、正確な表現ではない。
試写会OPトークにて小川紗良さんが、作中での「女性の主体性」の表現が
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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.2

大変面白かった。
モンクの普段の言葉遣いが至極丁寧なのが愛らしい。黒人女性作家に対して自分のゴミ作品とお前の作品の何が異なるのか、と問いただすシーンが特に印象的だった。黒人を扱った作品は白人の免罪符と
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ある男(2022年製作の映画)

3.7

アイデンティティと名付けとの関係性を問う映画。
ある男が〈誰〉であるかは、通常〈固有名〉の名付けによって定義される。また、親と部分的に名を共有することで、それがある種の呪いのようなかたちで、自分や子の
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マルメロの陽光(1992年製作の映画)

4.3

結果としての作品よりも、マルメロの木と共にいる時間それじたいが大事、というセリフが心に残った。
ドキュメンタリーにしては絵がきまり過ぎているし、登場人物らも慣れ過ぎている。どのようなプロセスで撮影が行
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エル・スール(1982年製作の映画)

3.5

自分の家族は劇中のオヤジほど拗らせてはいないものの、確かに、当たり前の存在であるはずの家族の、自分が知らない側面が開示されるときの不安ったらない。
しかしオヤジは本当どうしようもない人間だ。オヤジは何
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アインシュタインと原爆(2024年製作の映画)

3.2

「実際に悪事を犯す者より悪事を容認する者が世界を危険にさらしている」という一節が、イスラエルのガザへのジェノサイドへ低関心であり続ける私たちへ警鐘を鳴らしているようだ。
他方でWWⅡやナチス・ドイツの
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.8

裁判ものあるあるネタである、判断[judgement]とは根本的に「決断」であり厳密な意味で論理的な演繹ではあり得ないという主題。他にも、夫婦間の家庭における役割についても私たちに問いかける作品で、そ>>続きを読む

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

3.8

当時のスペイン内戦の最中に公開された映画で、フランコ政権への批判が暗示されたりしているらしい。
そんな背景すら知らずに鑑賞したが、少女アナの成長物語としても充分楽しめる。死をとおして生を知るアナのハー
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The Strange Thing About the Johnsons(原題)(2011年製作の映画)

4.0

性加害を黒人の父と息子のあいだに描いたのが巧みでいやらしい。どちらかが女性ならば私たちはその性加害の複雑性をただしく理解できなくなると、アリ・アスターは言おうとしている。
ともに男性だからこそ、他者へ
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

笑えるシーンも多く、前作前々作よりもジャンルレスなアプローチながら、相変わらず監督自身(?)のトラウマ的恐怖が開示される。アリアスターのお母様がどのような方だったのか心配になるレベル。

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

シンメトリーや正対を特徴とする統制された構図が美しい。表情のアップやカメラ目線、風の動きや光、カラーグレーディングも効果的だ。
しかしながら登場人物はみな人情にあふれ微笑ましく、また作品自体衒学的なセ
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ナイアド ~その決意は海を越える~(2023年製作の映画)

3.6

ナイアドが成功までに5回も失敗しているその事実が、これが実話であることを実感させられる。
ジョディ・フォスターだけでなく、船長の役柄が親しみを持てる。

ノスタルジア 4K修復版(1983年製作の映画)

4.5

劇場で1回、そのほかは自宅のDVDの劣悪な画質で何度か鑑賞している。
言うまでもないことだが、どの版よりも、映像の美しさがより強調されている。とりわけ、霧や湯気のディテールや、波打つ水の表現には驚いた
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.5

妙に主題の舵を優等生的な方向に切った作品だからこそ、露骨な性的描写がこれまでのランティモス作品とのバランスを取ろうとしているのでは、と思えてしまうほどその表現の必然性に欠けていた。
『聖なる鹿殺し』『
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