カラン

燃ゆる女の肖像のカランのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.5
第一印象は綺麗だなと。5分くらい観ていると、飽きた。こうやって飽きるのはデジタル撮影の特徴だが、実際、REDのデジカメのようだ。海はいい。明るいところもいい。夜や暗がりは、監督もカメラマンも、何も考えていないんじゃないかな、ただの暗がりの動画でしょうな。クィアしたかったのはいいけどさ、映画の表現力が足りないのではないかな。映画でクィアしないと。

クロースアップが自然である。モンタージュが上手くいっているのではなく、画家とモデルなので、クロースアップのカットバックがうまくはまっているだけだし、画家役の女優さんは目力があり、モデル役の女優さんも乳白色の肌でこわばった表情が良い塩梅であるから、ということだろう。つまりだ、撮影はあまり良くないのではないだろうか?

☆良かったシーン

①海
② キャンプファイヤーでサバトコンサート
③ラストの横顔のロングテイク

②なのだが、上に書いたように闇の中のショットの準備が監督にもカメラマンにもないようで、良く言っても、淡白な夜間撮影である。だから②はキャンプファイヤーなので夜間撮影が楽しいということではない。が、ここは皆で魔女のチャントみたいのを歌う。声が巨大なカーテンのように広がり、音響がすこぶる楽しいのである。野外なので、現実にはあり得ない音量である。別のシーンであるが、画家の女がヴィヴァルディの協奏曲をチェンバロで弾くと、音量は間違ったのか?というくらいデカかった。

③もコンサートホールの2階席の端で、オルフェウスとは逆に、振り返れない女の顔のロングテイクである。かなり長い。素晴らしいと思う。さらにヴィヴァルディが爆音でかかっている。ここまでデカい音は聴いたことがない。だからなのか、素晴らしい。②と同様に非現実的な音量である。たぶん心理的な効果を狙ったんだろうね。良いと思う。


しかしなあ、闇の中のウェディングドレスのゴーストとか、ダメでしょう。消滅の仕方がまったく美しくない。出て行く画家の女に追いすがって、「振り向いてよ」って叫んで、振り返るというアクションシーンも、もっさりしているし、驚きはないし、美しくもないわで、とにかく外してる。楽しいのは音をいじってるところだけなのかな〜。

やっぱりフィルムで撮影すべきだったのじゃないかなあ。黒澤清の『ダゲレオタイプの女』(2016)もデジタル撮影だったかな。なんかな〜。


Blu-rayは美麗な画質で、5.1chサラウンドも立派。
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