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燃ゆる女の肖像のkunicoのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0
まるで西洋画を眺めているかのようなカットが散見されて、それだけで「すごい映画だ」と唸ってしまった。
特にキッチンでの横並びが凄く絵画的で、「あ、今絵になった」「あ、映画に戻った」とスイッチがオンオフされるような構図作りが兎に角印象的だった。
コスチューム映画だとざらついた画面になりがちだけど、この映画はデジタルで撮影されていて光が多いし生っぽく見えるのも特徴で、だからこそより絵画に近い、特にバロック美術に近い気がしてならなかった。

脚本も良くて、そもそも記憶を辿りながら肖像画を本人に気付かれないように描くというミッションが画家の女に課せられている設定の時点で面白い。
熱視線を浴びされた方はそりゃ意識をするわけだし、肝なのは貴族の娘に恋愛経験が全く無いこと。
姉の自殺に唯一踏み込んできた人物としても画家のマリアンヌはエロイーズにとって特別な存在になっていく。
音楽が聴きたいと言うエロイーズにマリアンヌは音程の狂ったオルガンでヴィヴァルディを弾くが、これこそが本編では名言されなかったエロイーズがキスしたいと初めて感じた瞬間では。(だからこそ最後彼女は涙する)
細かい点が一つ一つ繋がって線になるように、2人の関係は徐々に深まっていく。
「見つめる」という行為がいかに容易く恋に結びつき愛に変換されるか、常々今泉力哉作品で感じていることを再認識する形となった。

ラストも予定調和で無くて好き。
2人にしか分からない方法でマリアンヌとエロイーズは永遠を生きていくのだと感じた。
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