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映画はアリスから始まったのHKのレビュー・感想・評価

映画はアリスから始まった(2018年製作の映画)
3.0
世界初の女性映画監督というだけでなく、映画黎明期のパイオニアで、ハリウッドの映画製作システムの原型を作ったと言われながら、近年までその存在をほとんど知られていなかったアリス・ギイについてのドキュメンタリー。
かく言う私もこの映画を観るまでアリス・ギイという人を全く知りませんでした。

フランス映画の冒頭のロゴでよく見かけるGaumont(ゴーモン)社は映画の製作をする前は映写機やカメラなど写真関係の機材を扱う会社だったらしく、そこの社長レオン・ゴーモンの秘書だったアリスは、リュミエール兄弟の初の記録映像を観て感動、記録用だけではもったいないと世界初の劇映画(『キャベツ畑の妖精』)を撮ります。

本作で映画黎明期にアリスだけでなくとても多くの女性監督がいたことや女性が主役の作品も多かったのは意外でした。
映画が発明された当時は、今のスマホの動画と同じで誰もがスナップみたいな映像ばかり撮っていたことに納得。その意味でも最初に物語を撮った功績は大きいと言えるでしょう。

しかもファンタジーやコメディ、カラー化や音声の同期といった現在の標準的な映画手法を数多く生み出したらしく、本編中でアニエス・ヴァルダ、マーティン・スコセッシ、ピーター・ボグダノビッチ、パティ・ジェンキンス、ベン・キングズレーその他が絶賛。ちなみにナレーションはジョディ・フォスターでした。

しかしながら本作自体はオープニングから映像の表面的な技巧に走りすぎで説明も雑、資料発掘の苦労話ばかりで一番重要なアリス・ギイこそが劇映画の生みの親だという真実が今ひとつ迫って来ません。
力の入れどころを間違ったのか、歴史的重要性は高いのにどうもスッキリしないドキュメンタリーになってしまっているのが残念。
HK

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