カワウソのアイサツ

パラサイト 半地下の家族のカワウソのアイサツのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
数年韓国に暮らした身にはリアル過ぎて、劇中でも問題になっていた臭いが劇場にむせ返るようで息苦しかった。
隣と真後ろの団塊世代オヤジのアクビ攻撃も拍車をかけてくれて、まるで4DXでした。

今作の監督、とにかく半端ない化け物監督だと尊敬している。
『グエムル』『母なる証明』『海にかかる霧』がとんでもない規格外な傑作だったから、期待爆上がりで席に着いた。

あぁ、リアルだ。
貧しい家の水まわり、トイレとお風呂と場合によってはキッチンまで一緒くたになった感じ。
そして濃厚に染みついた生活臭。
今作の富裕層の夫婦が話す、煮洗いした布巾(雑巾?)のような臭い?
切り干し大根とも言ってたな。
とにかく清潔とは対極にある臭い。
ソウルのタクシーを思い出した。
体臭と〇ナラ(クルマの中で普通にする)とニンニクの混じった臭い。

そんな耐え難いけど罪のない生活臭を富裕層が嘲笑するシーンがあるのだが、そんな事を言う豪邸の奥様は美人(整形?)というだけでお金持ちと結婚した事が1発でわかる無教養を見せつける。スカートなのに、だらしなく股を開いて座る姿など、気の毒なくらいにチープな演出だ。

それに対して、パラサイトする下層の家族は、妙に頭が良くて、行動力があって、なりふり構わずなところが本当に怖い。

とにかく出てくる人物全員が下品で不潔で吐き気がする。
吐き気がするのに目が離せない。
最新のジェットコースターで振り回されて振り回されて、ドブ川に吹き飛ばされた気分だ。

この監督は、冬のソナタのようなよそ行きのフェイクな日常を描かない。
リアルでギトギトした日常をねっちょりと正直に描くので好きだ。

こんなに胸焼けがして、気持ち悪くなっても、きっとまたジュノ監督の新作を初日に観ることだろう。

未だに分厚いサムギョプサルとニンニクと味噌と丸めたご飯とサンチュを口いっぱいに詰め込まれた気分で、おそらく今晩の夕飯は食べる事が出来ないだろう。

そんな愛すべき映画。