プリオ

クロール ー凶暴領域ーのプリオのレビュー・感想・評価

クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)
4.0
モンスターパニック映画は、幼い頃に山ほど見ていたが、久々に見るとやはり面白い。

映画は、頂点捕食者(apex predator)と言われるワニとの生存競争を、スポーツにおける順位競争と掛けていて、その中で闘う親子を描いた作品。

ハリケーンは親子のモヤモヤとした心の内を、ワニは彼らの恐怖や後悔、怒りのメタファーだろう。

そんな制御と安全を失った我が家で、父と娘はそんな危険な状況下だからこそできる対話をし、そして生き残りを懸けて家からの脱出を図る。

今作は、この親子による脱出劇がとても面白く感じた。

一般的にこういうパニックものって、愛する人を過剰に守ったり心配したりするものが多いんだけど、この親子にはそれがほぼないのが新鮮だった。

父と娘はお互いを過剰に気にすることなく、今できることを冷静に把握して現状を打破しようと行動する。そんな親子の姿、距離感、関係性は、自立と共存を同時に感じさせるもので、なんかすごくカッコよかった。

でもさすがに父が娘に「ワニよりも速いはずだぞ!」と檄を飛ばすのには笑ってしまったし、それに応えるように「頂点捕食者よ!」と宣言する娘もヤバくて笑えた。

このスポ根精神溢れる親子の力強さが溢れ返っていて、とっても元気をもらえる映画でしたね。

あと、主演の女の子の演技がうますぎた。目つきとか息遣いがリアル過ぎる。



ここから、ネタバレありです。



スポーツにかけた親子の物語。

でも、その代わり失ったものがある。自分のせいで失ったと思っているものがある。

何かに熱中したり関係を見出すことは、その一方で何かを諦め関係を手放すこと、とも言える。

父は、家族を壊したのは自分のせいだと思い、娘の人生に介入し過ぎたのを悔いている感じだ。

逆に娘は、父の期待に応えたい気持ちもありながら、同じく家族を壊したのは自分のせいだと思っている。

二人は気持ちを確かめ合い、そしてスポーツにおいてではなく、命をかけた闘いをするわけだ。

ラスト、生き残った親子は、自分たちがやってきたことは無駄じゃなかったと、全てが肯定された気持ちになったのではなかろうか。

娘の背中を見つめる父の顔が素晴らしく良かったです。
プリオ

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